妖怪博士 江戸川乱歩

江戸川乱歩

江戸川乱歩「妖怪博士」のあらすじを徹底解説、読んでみた感想

著者:江戸川乱歩 1938年に講談社(青空文庫)から出版

妖怪博士の主要登場人物

明智小五郎(あけちこごろう)
全国的に有名な名探偵

小林芳雄(こばやしよしお)
明智小五郎の助手で少年探偵団の団長

蛭田博士(ひるたはかせ)
郊外の屋敷に住む謎の老人

殿村払三(とのむらこうぞう)
私立探偵。明智小五郎に勝負を挑む

怪人二十面相(かいじんにじゅうめんそう)
どんな人間にも変装できる達人で、どんなものでも盗み出す怪盗。明智小五郎の最大のライバル

1分でわかる「妖怪博士」のあらすじ

麻布で少年探偵団員の相川泰二君が何者かに誘拐され、無事に自宅へ戻ったのも束の間、父親の会社の機密文書を持ち去ってしまいます。

明智小五郎は相川君の父親から調査を依頼され、同時に私立探偵の殿村払三に探偵勝負を挑まれるものの、殿村払三こそが誘拐の犯人であり怪人二十面相だと突き止め、怪人二十面相を捕らえると共に相川君も救出します。

しかし、怪人二十面相は逮捕後に隙を見て脱出し、今度は少年探偵団員の小泉信雄君を拉致し、首尾よく小泉君の父親から国宝級の掛け軸を掠め取ります。

明智小五郎と少年探偵団は怪人二十面相のアジトへ踏み込むものの、既に逃げられた後でした。

怪人二十面相の行方が掴めない中、少年探偵団は多摩の鍾乳洞へ探検に出かけますが、そこでまたしても怪人二十面相が罠を張り、少年探偵団は鍾乳洞に閉じ込められます。

そこに明智小五郎が救出に現れ、無事に少年探偵団を救出し怪人二十面相も捕らえることに成功します

江戸川乱歩「妖怪博士」の起承転結

【起】妖怪博士 のあらすじ①

相川泰二君誘拐事件

少年探偵団員の相川泰二君は帰宅途中の道で怪しい老人を見つけ、その老人を尾行したところ一軒の洋館に辿り着きます。

洋館の中で相川君は蛭田博士と名乗る謎の老人に出会いますが、蛭田博士は相川君を意図的に洋館におびき寄せたと告げ、催眠術をかけます。

相川君は無事に帰宅するものの、催眠術の効果で真夜中に起き出して父親が厳重に保管していた会社の機密文書を持ち去ってしまいます。

更に、相川君を探そうとした少年探偵団の他の団員も蛭田博士の罠にかかり、捕らえられてしまいます。

一方、息子と重要文書を盗まれた相川君の父親は毛利小五郎に調査を依頼しますが、そこに私立探偵の殿村払三が現れ、どちらが相川君を見つけられるかの勝負を挑みます。

勝負を受けた明智小五郎ですが、期限までずっと自宅にこもっており調査を行う気配はありませんでした。

期限当日、殿村は犯人の本拠を突き止めたと言って相川君の父親と刑事たちを洋館へ案内します。

そこで殿村は石膏像の中に捕らえられた相川君と少年探偵団員を見つけ出し、明智小五郎への勝利宣言をしますが、直後に同行していた新聞記者に変装していた明智小五郎が現れ、殿村払三こそが相川君と少年探偵団員誘拐の真犯人であり、蛭田博士だと告げます。

否定する殿村ですが、乞食に変装した小林芳雄君が現れて殿村が変装を行う一部始終が暴露され、更には明智小五郎からも蛭田博士の格好をした上での相川君たちへの面通しを要求されてしまいます。

進退窮まった殿村は部屋の罠等でなおも逃げようとしますが、全て無効化されて観念し刑事たちに連行されていきます。

[ad]

【承】妖怪博士 のあらすじ②

小泉信雄君誘拐事件

明智小五郎の活躍によって捕らえられた蛭田博士ですが、明智小五郎は新聞記者たちの質問に遭いながら胸騒ぎを感じていました。

そして、その予感は現実のものとなり、怪人二十面相は義手を使った罠や変装を駆使してまんまと刑事たちから逃げおおせます。

蛭田博士を取り逃がし萎れてしまった刑事たちを前に、明智小五郎は蛭田博士は怪人二十面相であり、彼が少年探偵団への復讐を終えたこと、次は自分も復讐の標的となると予想を告げ、実際に二十面相からメッセージが届けられます。

その数日後、少年探偵団員の小泉信雄君が小さな公園の中を通りかかったところ、5歳くらいの迷子の女の子助けて家に送り届けますが、家の主人にお礼をしたいと家の中に招かれます。

実は、この家の主人は蛭田博士こと二十面相の変装した姿で、小泉君は捕らえられ父親に助けを訴える手紙を書かされます。

その手紙は小泉君の父親に二十面相からのメッセージと共に届けられ、二十面相は小泉家の家宝である雪舟の山水図を渡すよう要求します。

小泉君の父親は親交のあった明智小五郎に助力を依頼し、明智小五郎の提案で雪舟の山水図と見せかけて別のよく似た掛け軸を渡すことにします。

しかし、小泉君の父親が会った明智小五郎は二十面相が化けていた姿で、小泉君が無事に帰されたときに初めてそのことに気が付きました。

小泉君の父親は本物の明智小五郎に相談をして確認したところ、金庫の中の雪舟の山水図も二十面相に盗まれていました。

明智小五郎は小泉君の案内で彼が捕らえられた家に向かいますが、既に二十面相の姿はなくメッセージを録音したテープレコーダーだけが残されていました。

【転】妖怪博士 のあらすじ③

少年探検隊の遭難

二十面相を取り逃がして以来、明智小五郎も警察も捜索を続けていましたが、なかなか足取りや手がかりを掴めないままになっていました。

そんな中、小林君たち少年探偵団は連休を使ってハイキングとして奥多摩の鍾乳洞探検に出かけることにしました。

普段はなかなか見られない大自然に心を躍らせる少年たちでしたが、鍾乳洞に入る前に管理人の老猟師に出会います。

鍾乳洞の案内を買って出る老猟師でしたが、小林君は入念な準備をしてきたことを理由にそれを断り、自分たちだけで鍾乳洞に入ります。

鍾乳洞の中は暗く、道も狭い上に何重にも分岐している迷路でしたが、小林君たちはひもの玉の端を入口の岩にくくりつけ、そのひもをたどっていつでも入口に戻れるようにしていました。

鍾乳洞の不気味な雰囲気を怖がりながらもどんどん奥に進んでいく小林君たちでしたが、80メートルほど歩いたところで深い穴に当たり、下には川のように水が流れていました。

そして、その穴には目新しい板がかけられており、ごく最近誰かがここに来て板をかけたようです。

穴を渡りきると今度はコウモリの大群に出くわし、またも怖がる団員たちでしたが、小林君はそんな彼らに発破をかけ何とか先に進みます。

しかし、ここで入口から引っ張ってきたひもが切れていたことが判明し、団員たちはパニックに陥りますが、小林君は冷静にひもが誰かによって切られたと分析します。

その直後、大きなコウモリのような化け物が現れ、小林君たちは逃げ惑いますが、穴にかけられていた板の橋がなくなっていました。

そして、化け物は小林君たちに自分が二十面相であること、ひもを切ったのも穴の板の橋を取り除いたのも自分だと告げ、小林君たちをこのまま洞窟で飢え死にさせてやると言います。

[ad]

【結】妖怪博士 のあらすじ④

二十面相の最後

小林君たち少年探偵団がハイキングに出かけた翌日、日が暮れても帰らない子供たちを心配した団員の親たちは明智小五郎に相談し、明智小五郎もその次の日の昼には奥多摩の鍾乳洞の入り口に立っていました。

明智小五郎は入口であの管理人の老猟師に会いますが、老猟師は子どもたちが出たのは見ていないが、帰ったに違いないと言います。

明智小五郎は奥に入れば遭難する可能性もあると考え、老猟師と共に鍾乳洞へ入っていきます。

そして、川の上の穴を通った矢先、老猟師は板の橋を穴の下へ投げ落として自分が二十面相だと告げ、少年探偵団員たちを洞窟の奥へ閉じ込めたと言います。

二十面相は拳銃を突き付けて明智小五郎を少年探偵団員たちの元へ行かせ、このまま全員を餓死させると勝ち誇ります。

明智小五郎と小林君たちは何とか二十面相への抵抗を試みますが、団員の羽柴君を人質を取られてなすすべがなくなってしまいます。

二十面相は憎き明智小五郎と少年探偵団を打ち負かしたことで意気揚々と秘密の通路を通って入口に向かいましたが、何と入口には明智小五郎が立っていました。

開いた口が塞がらず立ち尽くす二十面相ですが、何とか虚勢を張ってどうやって抜け出したかを問い詰めます。

実は、明智小五郎は自分とそっくりの替え玉の人物を用意して後をつけさせ、鍾乳洞内の暗闇の中で密かに入れ替わっていたのです。

更に、入口に増援の警察まで現れ、何とか鍾乳洞内に逃げ込むものの、とうとう明智小五郎と警官たちによって捕らえられました。

諦めの言葉を漏らす二十面相を後に、少年探偵団の「明智先生、ばんざあーい。」

「小林団長、ばんざあーい。」

というばんざいの声で物語は幕を閉じます。

江戸川乱歩「妖怪博士」を読んだ読書感想

明智小五郎と怪人二十面相の対決が全編に渡って描かれ、中でも最後の鍾乳洞での対決は特に面白い場面です。

犯人は二十面相と最初から分かっているため推理を楽しむ要素は少なめですが、毎回あの手この手で人を欺き盗みを働く二十面相と、その二十面相の上を行く明智小五郎の知恵と策略には舌を巻いてしまいます。

また、二十面相は小泉君を天井が徐々に下がる部屋に閉じ込めたり、明智小五郎と少年探偵団を鍾乳洞に閉じ込め餓死させようとする等、手を汚すことは嫌いつつも間接的に命を奪うことには抵抗がない辺りに、ただの怪盗ではない恐ろしさが見えます。

そして、それまでいくら捕まっても憎まれ口を叩いていた二十面相が最後の最後に出し抜かれた際に見せる狼狽振りを見ると少しすっとした気分になります。

ジャンルとしては娯楽探偵小説になりますが、今でも探偵ものや推理ものでは名探偵とライバルの関係が一つのテンプレートとして続いており、明智小五郎と怪人二十面相の影響の大きさが垣間見えます。

-江戸川乱歩

© 2022 文豪に学べ Powered by AFFINGER5