青の時代 三島由紀夫

三島由紀夫

三島由紀夫「青の時代」のあらすじを徹底解説、読んでみた感想

著者:三島由紀夫 1971年7月に新潮文庫から出版

青の時代の主要登場人物

川崎誠(かわさきまこと)
主人公、高学歴で後に闇金融業に手を染めていきます。

愛宕八郎(おたぎはちろう)
主人公の一高時代からの同級生で、後に誠と一緒に働くようになります。

野上耀子(のがみてるこ)
一高時代からの知り合いで、大学教授の娘。「男よりもお金を愛する」と言う性格です。

川崎毅(かわさき つよし)
誠の父親、開業医をしていて厳格な性格です。

易(やすし)
誠の再従兄、快活な青年です。

1分でわかる「青の時代」のあらすじ

主人公である東大生・川崎誠は名家に生まれ、厳格に育てられてきました。

父親には増悪的な心情を抱えたまま合理主義者へと成長し、東大生になった時ある女性と出会った後、大金詐欺に遭います。

それがきっかけとなり自身も金融業を始め、順調に儲けていき金融会社となっていきます。

しかし、それもいつしか仲間からも去られ崩れ去っていきます。

当時世間を騒がせた「光クラブ事件」を題材にした、事件の首謀者と同じく三島が25歳の時の作品です。

三島由紀夫「青の時代」の起承転結

【起】青の時代 のあらすじ①

厳格な父とそれに従う兄達との苦痛

千葉県のK市にある開業医の三男として生まれた誠、父親の毅は内科医をしているが厳格な性格で、小さな誠にもその手を緩める事はありませんでした。

小学校に入るか入らないかの時のあるでき事が、常に誠の記憶にこびりついていました。

それは文具店の軒先に吊るされていた緑色の鉛筆の模型を欲しがった時の事です。

珍しく厳しい父が店の者と交渉して手に入れてくれ、海に向かう父と兄たちの後ろを、鉛筆模型を大事に抱えて一生懸命追いかけます。

そし小舟に乗った所、毅は誠にそれを海に捨てさせます。

「男は欲しい物があっても我慢をしなくてはならない。」

と言う毅には古風なダンディズムがあり、これが効果的な教育法と信じて疑わない彼には満足感さえあったのですが、もちろん小さな誠には理解ができませんでした。

そうして中学生になった誠は、自分には感傷と言うものは自分には似合わなく、それではない英雄主義はないものかと考える様になっていきました。

中学2年生の時、「兵隊婆ぁ」と呼ばれる者がトラックにひかれて道端で死んでいく様を、冷静に観察する誠なのでした。

そして中学3年生になると級長と風紀係となります。

見た目にもきちんとしていて女にも目を合わさない誠は適任の様でしたが、ガラの悪い人達からからかわれると「こんな性質になったのもみんな父親のせいだ」と考え、更に「父について」の作文にも独善的などの文をつらつらと書いてしまう程に父親の事は嫌っていました。

しかし、毅の方は、大学教授は自分の果たせなかった夢であり、3人の息子の中で誠が一番適任と期待しての愛情からの厳しさだったのでした。

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【承】青の時代 のあらすじ②

新しい出会い

誠は一高に合格します。

毅は自分の所に来る患者たちに、何度もその事を口に出し辟易されてしまいます。

誠は運動には興味がなく知識欲を高めたいと考えます。

そして愛宕八郎と言う同級生と出会い、入寮式で委員長の長々とした話を聞かなければならない時につい笑ってしまうと言う失態を起こし、後で点検委員に尋ねられた時に愛宕が笑ったのは自分だかばってくれ、初めて彼と友情というものを感じていきます。

しかし、誠はカント哲学に熱中していき、合理的な生活(機械的な生活)=道徳的と考え、次第に寮の中では「とっつきにくい」と思われ孤立していきます。

そんな中でも誠は愛宕らと、一高生がよく行くと言うバーに出向きます。

その店での愛宕の様子から、彼の洒落っ気と地口の才能には驚きます。

しかし、自分の妄念を整理しようとして行ったのに、全てを曖昧にしてしまう場所に戸惑い、対して好みでもないウェイトレスに恋心を抱いた事にしようとしていきます。

そして誠は作戦メモを取り、日々瞑想を繰り返していくのですが、これがまた他者からは気味悪がられるのでした。

そして一人バーへ行き、作戦1の「名前を聞く」という事から始めますが、そのウェイトレスはなかなかそれには答えてくれません。

それが遂行されないと次の作戦2には行けない誠は困ります。

これは今までの試験の時と全く同じで、最初の1問が解けないと次の問題がいかに簡単でも次に進む事のできない困った性格なのでした。

バーでは結局、与太者風の青年の出現で、二度と足を運ぶことはしなくなりました。

【転】青の時代 のあらすじ③

詐欺事件と企業

それから6年後、終戦となり復員してきた23歳の誠は易と会います。

また、誠の頭の中では、唯物論や唯心論を思考し奇妙な理想主義を求め、今の刑法に異を唱えもっと合理的である事をモットーとしていました。

そんな誠は、席のまだあった東大に向かい、そこで久しぶりに愛宕に出会いお互い感無量となりました。

そのまま図書館の屋上に出向き話をしている所に、図書貸出係りの野上耀子という女性と出会います。

彼女は活淡で「人よりもお金」とすっぱりと言う人物でした。

彼女の父親は九州帝大の政治学教授との事でした。

誠は「彼女が物質を求める間は自分が精神的に愛し、彼女もそうなった時に厳然と捨てる」と考えるものの対した行動にも移せず、耀子から「50万円できたら結婚する」と言われた事で、父から預かっていた15万円を株に投資したものの2万円の損失を出してしまいます。

更に町で見かけた「財務協会」に行き「株は儲からない、事業に投資」と進められ、担保物件の玩具の中にあの子供の時に見たような鉛筆型を発見し、10万円を投資してしまいます。

後日訪れた時はその店は閉鎖されていました。

この事を愛宕に相談すると、彼らの手口をまねてもっと巧妙にやったらいいと言われます。

彼の叔父に金融業をしている人がいて、その仕事を見て来たとも言いました。

先ずは会計係を作る為、誠は下宿先の未亡人に手を出します。

そして愛宕の叔父の口利きで事務所を設け「太陽カンパニィ」とつけ新聞広告を出しますが、なかなか人は来ませんでした。

しかしついに50過ぎの男性が訪れ、誠はとうとうと説明をし3万円の投資をさす事に成功します。

更にサクラを用意する事を思いつき、大学の演劇研究会に依頼し、その中にはあの野上耀子もいました。

そのサクラの影響か、60半ばの男性がやってきて5万円を置いて行き、徐々に軌道に乗って行きました。

誠は実質的な信用よりも、宣伝の方が大切だと考えていきます。

その後電車の中で偶然に以前誠を騙したみすぼらしくなった男に出会いますが、彼を連れて帰り「太陽カンパニィ」の顧問兼営業部長に取り立てます。

さして銀座に事務所を移転し株式会社としてスタートします。

借入は1千万、貸付は5百万を超えていました。

誠は、毎月利子を支払えば人は元金の事は忘れてしまうと考えます。

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【結】青の時代 のあらすじ④

仲間との別れ

誠の事を心配する母親は毅には内緒で、偶然出会った易に誠の会社へ一緒に行って欲しいと頼みます。

会社に着いた母親は、息子が高利貸しになった事さらには社長をしている事に愕然とし泣いて誠に詰め寄ります。

そんな母と易を誠はいたずらっぽい笑みを浮かべ、元家族の家に取り立てに連れて行きます。

その様子に易は勝手に、腐食した特権階級の者をやっつけている正義感から誠は動いていると勘違いをし手伝ったのですが、後でそうではなかったと誠の態度から思い知らされ「君には人間らしい所が1かけらもない」と怒鳴って出て行くのでした。

それを誠は「侮辱というものは僕には居心地の良い平和だ」と感じて笑みを浮かべます。

その後、耀子に大量の仕事を押し付け先に自分のアパートへ帰りますが、電話で彼女に書類を届けさせます。

そこで誠と耀子は議論を続けていく中で、誠はこっそりと部屋の鍵をかけ耀子を無理矢理抱くのでした。

帰り際に耀子に封筒を渡し、目を通しておくように言います。

翌日の午前中は出社したものの、耀子はそれから無断欠勤をするのでした。

あの書類の中身は、誠が探偵社に探らせた耀子についての報告書でした。

彼女は妊娠3か月で、相手は下っ端の税務署員とありました。

彼の出世の為に「太陽カンパニィ」の財務を調べさせようとしている旨も書かれていて、その事を愛宕に話します。

しかし、彼は誠が亜ヒ酸を後生大事に持っている事を話し、誠は一瞬顔色を変えます。

そうして愛宕は誠に「そろそろ別れ時だ。

金詰まりの先は見えている。」

と告げ、次の安全安心な会社へと移っていきました。

一人街へ出て行った誠は、入った喫茶店で易を見かけます。

少女と笑いあって座る易らには、輝くような光に包まれているように映ります。

その少女の手渡した緑色の鉛筆の金色に光る文字を見て、子供の頃に模型の鉛筆をねだった誠に「あれは売り物ではありません」と言った母親の声が脳裏を通り過ぎていきました。

三島由紀夫「青の時代」を読んだ読書感想

主人公の誠は、父親に厳しく鍛えられたからか素地があったからかは分かりませんが、頭脳明晰の様子になぜ教育者などのしっかりとした職業へと進まなかったのかと少し残念にも思いました。

しかし、そこにはきっと愛情表現を上手く出来なかったというか、それが厳しい教育であると思い込んでいた毅との気持ちのズレがあったのも大きいのではと考えられました。

子供時代の親の言動が、当時の自分にとっては嫌な事をする大人としか映っていなく、それが大人になっても残っている反面、大人の目線で考えると自分の出来ていない部分を鍛えようとしてくれていたと理解もできる経験から、誠は自分の考えに固執する余りに広い視野で物事を考える事が苦手で、大人になり切れなかった秀才のようにも推し量られました。

全体的に他者からの評価が低い点をあまり文章としては多く語られない点からも、常に自分の中の思考に偏っている性格だと思え、その少しの偏様と固執が積み重なっていき、人とは違う感性を作り上げて行ったのだと思いました。

最後の終わり方は、現実の事件をモチーフにしている点や、亜ヒ酸を常に持っている点から自殺へと進んでいく様にも思えましたが、光の中にいる快活な再従兄の易を表わす事で、逆に誠側の影が一層色濃く見える描写は、彼のその後も暗示したかのような終わり方なので気に入っています。

-三島由紀夫

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