草枕 夏目漱石

夏目漱石

夏目漱石「草枕」のあらすじを徹底解説、読んでみた感想

著者:夏目漱石 1950年11月25日に新潮社から出版

草枕の主要登場人物

男(おとこ)
絵描き。書きたいことがはっきりしないでいる。

那美(なみ)
志保田の宿の娘。

久一(ひさいち)
那美の従兄弟。満州へ出兵。

和尚(和尚)
観音寺の和尚。老人。

小女(こおんな)
宿で働く女。主人公の身の回りの世話をする。

1分でわかる「草枕」のあらすじ

男は山道を登った後、雨に見舞われ茶屋へと駆け込む。

そこで那古井の宿を知り泊ることに。

宿の主人の娘・那美は今まで見た中で一番美しい所作をする女として見たが、何か足りないと感じていた。

その那美には野武士のような風貌をした元旦那と、従兄弟の久一がいた。

その久一が満州へ出兵命令があり、汽車の見送りに行った。

そこで那美は元旦那を汽車の窓越しに見つけ、「憐れ」な顔をした。

その顔を見た主人公は、それこそが那美に足りなかったものだとわかり、那美の肩を叩きながら「それが出れば画になる」と言った。

夏目漱石「草枕」の起承転結

【起】草枕 のあらすじ①

人生とは

主人公は山路を登りながら、とにかく人の世の中は生きにくい、どこへ越しても住みにくいが、人でなしの国はもっと住みにくいと考えました。

あらゆる芸術家は人の世を長閑にして人の心を豊かにするから尊いと考えます。

自由に飛ぶ雲雀を見つけ、詩を思いだします。

そうしていると雨が降ってきます。

茶屋に駆け込んで茶屋の婆さんと会います。

茶をもらい温まっていると馬をつれた源兵衛が訪れます。

婆さんと源兵衛との会話の中に那古井の宿のお嬢さん・那美と長良の乙女は似ているという話が出てきます。

二人の男に言い寄られた長良の乙女は歌を残して身を投げます。

那古井の那美も同じく男関係で苦労をしています。

それを聞いた主人公は宿を訪れることにします。

夜八時には宿に着きます。

小女が取次、晩飯の準備、風呂への案内、布団を敷く準備もしているのを不思議に思います。

他の客はおらず、人の気がない宿で疲れを癒せず、夜が明けるまで一睡もできず、部屋の周りのモノを見ながらあれこれ考え、時間をつぶします。

気のせいか、誰かが小声で歌っているのが聞こえてきます。

それは、長良の乙女が残した歌のようにも聞こえます。

気になって障子を開けます。

月の光を忍んで朦朧とする影法師を見つけたが、意識する前に消えてしまいます。

呆然としますが、寒さに気づき布団に戻ります。

恐ろしいものをただ恐ろしいと思うのではなく、どうすれば詩にできるか考えました。

できなかったので俳句にしてみようとするとき、一滴の涙がこぼれます。

それを俳句に纏めた時には、自分は泣くことが出来る男だったのかとうれしく思ったのです。

いつしかうとうとし始め、気が付くと完全に夜が明けたのです。

浴衣のまま風呂に行き、そのまま入り、そのまま出て戸を開くと、女が立っていて「夕べはよく寝られましたか」と言います。

女に着物を着せてもらい「ありがとう」会釈したのち、女の去っていく後ろ姿をまじまじと見ます。

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【承】草枕 のあらすじ②

宿の女のこと

部屋に戻ると掃除されています。

夕べ虚ろの中で書いた俳句に添削がされています。

夕べはわからなかった外の景色をじっくりと観察します。

先ほどの女が朝飯を持ってきます。

食事をしながら夕べの女の話をすると、旅館の主人の娘に似ていることが発覚します。

那美と言う名で、寺に行き禅坊主に会いに行くこともわかります。

菓子皿を見ると立派な羊羹があり、源兵衛が買ってきたものと知ります。

主人公は、茶人ほど勿体ぶった風流人はいないと考えます。

趣味の教育のない連中が、どうすることが風流か見当のつかない中で、機械的に利休以後の規則を鵜呑みにして、これが大方風流なのだろう、と却って真の風流人を馬鹿にするための芸である、と表現します。

女と会話する中で、「世の中気持ちの持ちよう一つでどうにでもなる」と女は言います。

長良の乙女の歌の話題に移り、あれは憐れな歌と女は言います。

じゃあどうすると男が尋ねると、両方ものにすると女は答えます。

外で鶯が鳴き、「あれが本当の歌だ」と女は男に言います。

男は床屋へ行き、ヒゲを剃ってもらいます。

床屋の主人は、宿の女は出戻りで、旦那の銀行が潰れて贅沢ができなくて戻ってきたと説明します。

宿の長いはよした方が良いと忠告します。

寺の坊主が女に文を送り、受け取った女が寺に行っては、仏様の前で一緒に寝ようと言い出して、坊主の首にかじりついた過去を話します。

面白そうだと、男はますますの興味を抱きます。

床屋に小坊主の了念が訪れます。

女に文を送った坊主は修行をしにここを離れ、女が狂ったのは前の旦那の祟りだと言います。

いくら和尚さんの御祈祷でも治らないと話します。

毛を剃り終えて出ていきます。

宿に戻り、障子も襖も全て開けて、ただ一人この広い部屋をつかいながら、今までの事を振り返りながら何かしたためようとします。

それから手ぬぐいを引っ提げて湯壺に浸ります。

遠くから聞こえる三味線と歌を聞きながら子供の時を思い出します。

あの時の見た三本の松はまだ残っているだろうか、鉄燈籠は壊れずにあるだろうか、と考えます。

女が途中入ってくるが、すぐに湯から出て、ホホホホと去っていきます。

【転】草枕 のあらすじ③

息のかかるほどの距離

寺で御茶の御馳走になったようです。

相客は僧一人と若い男です。

僧は観音寺の和尚の大徹と言います。

若い男の歳は24,5です。

お茶を出す僧は60歳ぐらいの達磨を草書に崩したような風貌をしています。

老人は男が西洋風の絵を描くことを知り、久一さんと同じと言います。

久一は那美の従兄弟にあたります。

那美は一人散歩を散歩に似合わぬ格好で行き、和尚を驚かします。

老人は是非にと男に硯を見せます。

その硯を褒めると老人は喜びます。

それから筆や絵を見せ、あれこれ表現しては褒めます。

若い男は老人の甥だったようで、今度満州のほうへ行くようです。

戦争で志願兵をやったばかりに招集されたそうです。

宿へ戻り書物を読んでいると女がやってきた。

本を読むことが面白いか否か、何故最初から読むのかと問答します。

自分たちは年をとったと言います。

日本の小説、海外の小説の話をした後、轟と山が鳴ります。

地震のようです。

外では雉子が飛び、「雉子が」というと「どこに」と女が触れる距離まで近づきます。

女の息が男のヒゲにかかるほどです。

庭の窪んだ岩に溜まった春の水が蠢き、池には波が立っていました。

山桜もうねっています。

男はその景色を見て愉快だと感じます。

女と距離が縮まり、従兄弟の久一のことを聞きます。

久一は満州へ向かうようで、会いにここへ来たそうです。

今は兄の家に泊まっているそうです。

女は男に「私の絵を描いてくれ」と頼みますが、男は断ります。

那美の顔には憐れの念が現れていないからです。

池の絵を描きに外へ行くと、鉈を持った40ぐらいの逞しい男と出会います。

それは源兵衛で、四日かけて山を越えているようです。

この池は昔志保田のお嬢様が身を投げたところと源兵衛は言います。

今のお嬢様よりもずっと昔で、今と同様に美しかったそうです。

この地に現れた一人の虚無僧を一目惚れしたお嬢様が、僧と一緒になりたいと泣くが、願いは届かず一枚の鏡を抱えて池に身を投げました。

それから志保田の家には代々気をおかしくしたものが出来ると言います。

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【結】草枕 のあらすじ④

出会いと別れ

観音寺の石段を登ります。

小坊主の了念に取り次いでもらい、和尚に会います。

話をしに来たようです。

話を終えると和尚は門まで送ってくれて、男はここを後にしました。

蜜柑売りから蜜柑を買うと妙な節の歌を歌います。

銃の音がすると思えば、猟師がカモを取るのだと教えてもらいました。

このことを知っていれば那美と言う人物を知らずに済んだのです。

男の旅の目的は世を離れ、画工になりきることです。

道を歩きながら詩を考え、いい出来だと唸りながら喜んでいると、男の咳払いが聞こえます。

素足に下駄を履いた野武士のような人です。

野武士は女と会い、その女は那美です。

那美の袖から財布が落ちます。

男は手を出して財布を受け取ります。

野武士が去った後に那美に気づかれ、一緒に帰ります。

あの男はと聞くと、日本に居られないからと金をもらいに来たそうです。

満州へ行くそうです。

そして、那美の離縁された亭主です。

那美は兄の家へと向かい、そこに居る従兄弟の久一に、白鞘の短刀を渡します。

川舟で久一を吉田の停車場まで見送ります。

那美は男に絵を描いてほしいと頼むが、顔が絵にならないとして満足のいくものができないのです。

舟を降り駅に向かいます。

駅に着くと久一と同じ運命の人が溢れています。

時間になり、那美が行こうと言います。

別れを惜しみ汽車を見送る中、汽車の窓越しに見覚えのある人を見つけます。

那美の別れた亭主です。

那美は、顔を合わせてしまいます。

その時、今までにないほどの「憐れ」な顔をします。

男は「それだ!それだ!それが出れば画になる」と那美の肩を叩きながら小声で言います。

男の考える画面はこの咄嗟の瞬間に成就したのです。

夏目漱石「草枕」を読んだ読書感想

この仕事をキッカケにあらためて読み返してみると、新たな発見があります。

以前分からなかった人間関係や那美の描写をリアルに思い浮かべることが出来たのです。

はじめは短いから読みやすいだろうと手に取ったけれど、開いてみると訳が分からなくなるほど難解な文章であります。

なんとか読み切ったあの頃と比べて、文章を理解しながら読み返すと、意味やストーリーを見つけることができるようになっていましたのです。

読む時期によって内容が変わるのが面白く、夏目漱石の小説に共通して言える、読んだ後の「終っていない感」もあって、次の作品を読もう、夏目漱石を知ろうとなれます。

この草枕に関しては、日露戦争のことや満州を含む戦争のこと、能というものが如何に美しいかということ、表現するということが如何に難題で面白く騙されやすいかを説いているように思います。

夏目漱石については、沢山の作家が解説したり、思い思いに考えたりして、そういった著作や映像を楽しめるのも良いです。

今後の人生をともにする一冊であることに間違いない作品です。

-夏目漱石

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