宮部みゆき「R.P.G」のあらすじを徹底解説、読んでみた感想

宮部みゆき

宮部みゆき「R.P.G」のあらすじを徹底解説、読んでみた感想

R.P.Gの主要登場人物

武上 悦郎(たけがみ えつろう)
刑事。本当は事務を担当するデスクだが、ひょんなことから取り調べを担当することに。

所田良介(ところだ りょうすけ)
殺人事件の被害者。生前は浮気癖があり、ネット上の疑似家族を作っていた。

所田 一美(ところだ かずみ)
所田良介の娘。

北条 稔(きたじょう みのる)
疑似家族の息子。ハンドルネームはミノル。

加原 律子(かはら りつこ)
疑似家族の娘。ハンドルネームはカズミ。

三田 佳恵(みた よしえ)
疑似家族の母親。ハンドルネームはお母さん。

1分でわかる「R.P.G」のあらすじ

ある春の夜、所田という一人の男性が殺されました。

警察が捜査すると、死んだ所田にはネット上で疑似家族のようなものを作っていたことが分かります。

妻役、娘役、息子役の3人が、チャット等でやりとりをしていた履歴がPCに残っていたのです。

犯人はその中にいると警察は考えます。

そして、所田が知らない人物と話しているのを目撃したことがあるという実の娘、一美に面通しをするため関係者全員を武上という刑事が取調室に集めます。

取り調べの様子をマジックミラー越しに真剣に見つめる一美でしたが、途中から様子がおかしなことに。

実は、犯人は自分たちを放って疑似家族を作っていた父親を許せなかった一美だったのです。

宮部みゆき「R.P.G」の起承転結

【起】R.P.G のあらすじ①

「お父さん」が殺される

ある夜、所田良介という男性が殺害されるという事件が起こりました。

警察が捜査にあたった結果、その少し前に女子大生が殺された事件と関連があるという物証が出て来ます。

犯人は同一人物であるとしたうえで、被害者同士の関係を調べた結果、二人は不倫という形で過去に交際していたことが分かりました。

所田は浮気癖があり、妻と娘がいながら若い女性と何度も不倫を繰り返し、妻もそれを黙認していたのでした。

さらに、所田にはネット上で疑似家族を作っていたことがPCの履歴から判明します。

妻役のお母さん、息子役のミノル、娘役のカズミという3人の人物とチャットでやりとりし、いわゆるオフ会をして実際に会っていたことまで分かります。

警察はさらに捜査しますが、犯人はなかなか見つかりません。

そんな中、デスクと呼ばれる事務作業を担当していた中本という刑事が、違った視点から別の容疑者を割り出します。

しかし取り調べ直前、心筋梗塞で倒れ、入院することになりました。

取り調べは彼がする予定だったため、急遽代役が必要になります。

そこで白羽の矢が立ったのが武上という同じデスクの刑事でした。

中本から一部始終を聞いていたため、武上はその仕事を引き受けることに。

取り調べを受けるのは、ネット上で家族となっていたお母さん、ミノル、カズミの3人です。

3人は所田が殺された後も連絡を取り合っており、子ども役二人はお母さんの犯行を疑っているような文章が残っていました。

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【承】R.P.G のあらすじ②

ハンドルネーム「ミノル」と「カズミ」

所田の実の娘である一美は、父親が知らない人物数人と話しているのを目撃したことがあると証言していました。

そのため、実際にその人物かどうかを確かめてもらうために取調室の隣の部屋で待機してもらい、マジックミラー越しに面通しをすることに。

彼女はまだ十六歳ですが、大人っぽい美人な女の子で、父親が殺されたことに強い憤りを持っていました。

犯人を殺してやりたいと彼氏に電話で話していたのを、一美の母は聞いていました。

最初に取調室に呼ばれたのは息子役のミノルです。

彼の本名は北条稔、十七歳。

彼は高校を中退しており、無職です。

次に、あまり間をおかずに娘役のカズミが呼ばれました。

マジックミラーの向こうから、一美が急かしたからです。

自分と同じ名前のハンドルネームを使って、実の娘の自分よりも親しげにしていた少女を早く見たい様子でした。

カズミ役は加原律子で年齢は十七歳。

派手な装いをしているので、一美と一見するとよく似た印象です。

彼女は最初からおびえた様子で現れました。

疑似家族が出来た経緯としては、最初に彼女がたまたまカズミというハンドルネームを使ってあるホームページに家庭内の悩みを投稿したことがきっかけでした。

無関心な母親に育てられた律子は、誰も親身になって自分の悩みや思いを聞いてくれないと感じていました。

そのことに対して、所田がお父さんというハンドルネームを使ってカズミ(律子)に突然話しかけたのです。

最初から自然にお父さんとして投稿し、ごっご遊びであることは周知でしたが、初めて自分の相談に真剣にのってくれる相手が現れたことに律子は舞い上がってしまったのでした。

【転】R.P.G のあらすじ③

ハンドルネーム「お母さん」

ミノルはそんな二人に軽い気持ちで話しかけました。

もちろんそのチャット上で、最初から弟として登場したのです。

他にもこのごっこ遊びに加わる人が出てくるかもしれない、そうだといいなと考えていた所田はすぐにミノルも受け入れました。

そして、3人目の疑似家族が取調室に呼ばれます。

ハンドルネームお母さんの三田佳恵は三十代半ばの女性でした。

彼女は、元々3人が出会ったホームページとは別のサイトで出会いました。

最初から出来過ぎた会話をしている3人は本当の家族ではないと感じた佳恵はお母さんというハンドルネームで会話に加わったのでした。

4人になった家族はいろんな会話をしていく中で、実際に対面で会ういわゆるオフ会をすることになります。

そこで、武上は彼女にオフ会以外でも所田と二人きりで会っていた事実を突きつけました。

彼女は実際の所田に好意を抱いていた節があり、所田が一軒家を建てるために下見しようとしていた家に一緒に付いて行った過去があったのです。

そのため、子ども役二人もお母さんの三田を疑っており、メールにもその履歴が残っていました。

その頃、警察はあるごみ捨て場から血痕のついたパーカを発見しました。

犯人が着ていた物的証拠です。

そのことがすぐに伝えらえると、取調室は騒がしくなります。

参考人だと言われていた自分たちが疑われているかもしれないと知った3人はそれぞれ取り乱してしまうのです。

そんな中、隣の部屋でずっと見ていた一美の様子も変わります。

パーカという物証が出たことで、一美は顔色を変え、慌ててトイレに駆け込み電話をかけ始めました。

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【結】R.P.G のあらすじ④

一美の告白

一美が電話していた相手は、彼氏の石黒達也でした。

彼女が取り調べ中に何度も携帯でメールを送っていた相手も彼だったのです。

警察は、一美が彼に電話をすることを見越して身柄を拘束していたのでした。

取調室に入ってきた達也を見て、一美は本格的に取り乱します。

しかし、達也に「もうやめよう」と説得され、警察に自分の犯行であることを認めるのでした。

警察はまず、PCに付いた指紋の状況から一美が父親のPCを盗み見て、疑似家族について知っているはずだということに気付いていたのです。

そこで、自分が娘の立場だったら殺したいほど父親を憎むだろうということに気付いたのが、中本という刑事でした。

一美は元々浮気性だった父親を毛嫌いしており、冷戦状態だったのです。

一美はまず、父親を尾行したりPCを調べたりして、カズミと名乗る少女を突き止めたつもりでした。

しかし、実際に会ってみると彼女はカズミではなく、元不倫相手の女子大生でした。

自分とほとんど歳の変わらない彼女に笑われ、カッとなった一美はまずその不倫相手を殺してしまいます。

その後、一美は父親である所田を二人きりで話したいと家ではない場所に呼び出しました。

一美は自分が元不倫相手を殺してしまったことを告げ、自分をないがしろにして疑似家族を作っていたことを責めると同時にその家族たちの本性を聞き出すつもりでした。

が、父親は薄々一美がやったことに気付いており、かばおうとしたのです。

一美にはそれがとてもショックであり、怒りに変わって父親も持参した果物ナイフで刺し殺してしまいました。

結局父親が一美をネット上のカズミと同じように扱おうとしたことが許せなかったのです。

そして、その両方の現場に付き添っていたのが彼氏の達也でした。

ブルーのパーカも実際に彼のものでした。

父親が死んだ後も、警察に疑似家族を探させようとした一美は、逆に警察の罠にかかったのです。

なんと、取調室に呼ばれていたミノル、カズミ、佳恵は3人とも巡査や警察関係者の芝居であったことが明かされたのでした。

宮部みゆき「R.P.G」を読んだ読書感想

娘役カズミが自信満々に口にしていた、みんな現実世界で寂しいのだと、孤独だから心のつながりが欲しいのだというのにはちょっと納得しました。

20年以上前の作品なので、インターネットの描写は若干今より古い描写がありますが、今も同じような気持ちでネットの中で繋がっている人たちはいるのでしょう。

推理小説としても純粋に楽しめました。

最初はこの傍から見ると寒く感じるようなごっこ遊びの家族の中に犯人がいるのだと思いながら読み進めていたので、違和感のあった一美の言動がどんどん明らかにされ、伏線回収されていくのが快感でした。

特に見どころとなるのは、武上刑事による取り調べの運び方だと思います。

最後には種明かしがされるので対峙していたのは容疑者ではないと分かるのですが、それまでの取り調べの流れを作っていく様子がドキドキしました。

そして、最後のほうで彼がずっと一美の様子に神経を使いながら取り調べをしていたことが分かるので、それまでの緊張感の理由が180度転換されてスッキリします。

-宮部みゆき

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