初恋 国木田独歩

国木田独歩

国木田独歩「初恋」のあらすじを徹底解説、読んでみた感想

初恋の主要登場人物

僕(ぼく)
主人公。14歳の少年で餓鬼大将。村に住む「大沢先生」という漢学者をへこましたいと考えている。

大沢先生(おおさわせんせい)
「僕」の村に住む漢学者。とても頑固者で、それ故に村の人々からも相手にされていない。

愛子(あいこ)
大沢先生の孫娘。奥ゆかしさのあるかわいい少女。

太助(たすけ)
大沢先生の家の下男。おどけた調子の面白い男。

父(ちち)
「僕」の父。村の年長者である大沢先生に生意気な態度を取ってしまった「僕」を叱る。

1分でわかる「初恋」のあらすじ

主人公の「僕」が14歳の頃、「僕」の村には頑固者の漢学者「大沢先生」がいました。

餓鬼大将だった「僕」は、彼の事が気に食わず、なんとかしてへこませられないかと考えていました。

そんなある日、たまたま読書をしている大沢先生と出会います。

大沢先生をへこます機会と捉えた「僕」は、大沢先生が嫌いな「孟子」を話題に彼をへこまそうとしますが失敗。

その晩、家に呼ばれる事となります。

夜、訪れた家で「僕」は大沢先生から様々な話を教えて貰った「僕」はそれがきっかけとなり、大沢先生の事を慕うように。

以来、毎日彼の家へ通うようになりました。

1月がたった頃には、僕の中にあった生意気さはなりを潜めていました。

その後、先生の孫娘に初めての恋を「僕」は、彼女と籍をいれ、「大沢」と名乗るようになったのでした。

国木田独歩「初恋」の起承転結

【起】初恋 のあらすじ①

頑固者で淋しい暮らしをしている大沢先生

主人公の「僕」が14歳であった頃、彼が住んでいた村に「大沢先生」と呼ばれる老人がいました。

大沢先生は立派な漢学者でしたが、あまりにも頑固で、人を屁理屈で丸め込もうとする事から、村の誰からも相手にされずにいました。

狭い田の畔で大沢先生と遭遇する事があれば、彼と出会った者は必ず彼を避けて、彼が畔を通り過ぎるの待つ程でした。

しかし大沢先生はそんな村人の態度に、機嫌を悪くするどころか得意げになり、大手を振って堂々とした態度で村内を歩くのでした。

そんな先生の家は「僕」の家から3丁と離れていない山の麓にありました。

四間ばかりの小さな造りの家。

庭には樹木が多く、様々な草花の種々も植えてあるようでした。

そんな家には大沢先生以外に、40歳になる下男と孫娘がいました。

3人だけの暮らしは、傍から見るととても淋しそうな暮らしで、「僕」の目にも陰気臭い暮らしの光景として映り込んでいました。

ある日のことです。

散歩をしていた「僕」は、その最中でたまたま大沢先生の家の近くにある丘にやってきます。

そこには松の根に腰を打ちかけて本を読んでいる先生と、彼の孫娘がいました。

大沢先生は僕には気づかず、本を読み続けていました。

孫娘も遠く海の方を見ていましたが、「僕」が傍までやってくると、その足音で孫娘の方が「僕」に気づきました。

孫娘が「僕」に挨拶をしてくれた事で大沢先生も「僕」に気づきますが、大沢先生の方は「僕」の姿に不機嫌そうにこわい顔をして、本を懐にしまってしまいます。

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【承】初恋 のあらすじ②

大沢先生をへこましてやろうと試みる「僕」

大沢先生達と遭遇した「僕」は、瞬間、大沢先生をへこましてやろうと考えました。

実はこの頃の「僕」は所謂「餓鬼大将」と呼ばれる人間で、それ故に大沢先生の態度が気に食わず、癪に触っている状態だったのです。

常々、いつかへこましてやろうと考えていた「僕」は、いい機会だと大沢先生に話しかけます。

「僕」は大沢先生が嫌いな本「孟子」の話題を彼に振ることにします。

「僕」の生意気な態度に腹を立てた大沢先生は、孫娘が止めるのも聞かずに「僕」と言い争いを始めます。

すると大沢先生は懐にしまった本を取り出し、それを「僕」に見せてきます。

それはなんと大沢先生が嫌いな筈の孟子で、「僕」は驚かされます。

孟子に書かれた内容を引き合いに「僕」に反論をする大沢先生。

漢学者だけあり、弁がたつ大沢先生に「僕」が敵うわけもなく、「僕」は返す言葉に困ってしまいます。

けれど負けるのも悔しい「僕」は、小賢しく機転を利かせ「ならばなぜ、孟子を読んでいるのか」と大沢先生に尋ね返してみる事にします。

孟子の言う言葉の全てが悪いのではなく、益になることだってあるはず、「僕」はそういうところが好きなだけ、だから大沢先生も同じなのではないのか、と大沢先生を問い詰める「僕。」

すると図星だったのか、今度は大沢先生が言葉を詰まらせました。

大沢先生は「そんな生意気なことを言うものではない」と主人公をたしなめると、色々話を聞かせてやるから今晩自分の家に来るようにと言い残し、帰りを促す孫娘の言葉に従って家へ帰って行きました。

【転】初恋 のあらすじ③

「僕」の気づき

「僕」は大沢先生をへこませたのか、それとも自分がへこまされたのかわからないまま家に帰り、父に大沢先生との間にあった出来事を話しました。

すると父は、年長者に対して失礼な態度を取った「僕」の事を叱り、「今晩謝ってくるように」と「僕」に言いつけました。

そうして「僕」はその晩、父の言いつけ通り、そして大沢先生の言葉通り、大沢先生の家に訪れる事となりました。

しかしそこで「僕」を待っていたのは、日中の時とは異なる態度の大沢先生でした。

大沢先生は、別れ際の言葉通り、親切な態度で「僕」に色々な話をしてくれました。

そんな大沢先生の話を聞いていく内に、「僕」は彼の事が好きになります。

まるで自分のお祖父さんのようにさえ思えてくる程でした。

この日以降、「僕」は毎日のように大沢先生の家へ訪れるようになります。

そんな「僕」を大沢先生と孫娘の愛子は、いつだって機嫌よく歓迎してくれました。

家での大沢先生は、初めて出会った時からは考えられない程に快活な人でした。

頑固で屁理屈な老人と、人々から敬遠されているとは思えない程でした。

孫娘の愛子は小学校にすら行っていないようですが、少しも人ズレのない、なんとも言えない奥ゆかしさのあるかわいい少女ですし、下男の太助もおどけた事を多く言うとても面白い男で、「僕」は傍から見ると淋しそうに見えていたこの家が、実はとても明るい場所であった事に気付きます。

全ては「僕」の勝手な思い込みだったのです。

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【結】初恋 のあらすじ④

「僕」の変化と最初で最後の初恋

毎日のように大沢先生の家へ通い、楽しい日々を送る「僕。」

大沢先生の家へ「僕」が通い詰めて1カ月がたった頃には、「僕」の中にあった生意気さはすっかりとなくなっていました。

餓鬼大将で、頑固者な漢学者の鼻をへし折ってやろうと小賢しいことを考えていた「僕」はなりを潜め、もうどこにもいません。

「僕」の中にあった大沢先生に対する印象も、頑固者から人の善いお祖父さんに様変わりしていました。

出会った頃にあった険悪な雰囲気は、もう2人の間にはありません。

大沢先生の家を訪れるようになった「僕」は、その内に「僕」と出会った岡で読書をする大沢先生にも付き合うようにもなっていました。

大沢先生は岡の頂上にある松の根で本を読み続けました。

「僕」は、大沢先生の読書が終わるのを待つ日々を過ごすようになります。

その傍らには大沢先生と「僕」が出会ったあの日と同じように、彼の孫娘の愛子もいました。

「僕」は岡の頂上の岩に腰をかけながら、孫娘の愛子と沈んでいく夕日を幾度となく見送り、大沢先生の読書が終わるのを待つ日々を過ごすようになりました。

そうした大沢先生、そして愛子との日々を過ごしていく内に、「僕」は愛子に心惹かれていくこととなりました。

愛子に恋をしたのです。

それは「僕」にとっての初恋でした。

また同時に、これが「僕」にとっての最後の恋にもなったのです。

なぜならばこの初恋が、今、「僕」が大沢と名乗っている理由だったからです。

国木田独歩「初恋」を読んだ読書感想

国木田独歩といえば、自然主義文学の先駆者として有名な作家。

その為、世間一般的にはあまり「恋愛もの」を書くイメージはない作家だと思います。

事実、私もこの「初恋」を読むまでは、国木田独歩が恋愛ものも書く作家であるとは思いもしていませんでした。

この小説の一番の魅力は、最後の最後で明かされる「実はこの話を語る主人公の名字が「大沢」である」というその事実にあると思います。

最後の最後に突然明かされる事実にはアッと驚かされると同時に、ようやく判明したタイトルの意味に「してやられた」感にとらわれる作品となっています。

しかし騙された悔しさよりも、思わずニヤけそうになる愉快なオチにはとても心躍るものがあり、爽快なオチだといえる事でしょう。

主人公と大沢先生が仲良くなっていく過程も目が惹かれるものがあり、恋愛ものとしてだけではなく人間ドラマとしても非常に楽しめます。

見えるものが全てではない、見えないところに隠された真実があるのだという事を思い知らされる作品です。

-国木田独歩

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