にごりえ 樋口一葉

樋口一葉

樋口一葉「にごりえ」のあらすじを徹底解説、読んでみた感想

著者:樋口一葉 1895年に博文館から出版

にごりえの主要登場人物

お力(りき)
菊の井で働いている酌婦

源七(げんしち)
布団屋の店主。お力に思いを寄せている

結城朝之助(ゆうきとものすけ)
紳士風の男。お力に会うために店に通っている

1分でわかる「にごりえ」のあらすじ

丸山福山町の銘酒屋街にある料理店「菊の井」につとめるお力。

彼女は昔、布団屋の源七と恋仲でした。

しかし、源七は経済的な理由からお力のところに通えなくなってしまいました。

今は妻子と一緒に長屋での苦しい生活をおくっています。

しかし、それでもお力への未練を断ち切れずにいました。

お力は新たに朝之助という紳士風の裕福な客がつき、二人は親交を深めます。

一方、源七はお力への思いから仕事もままならなくなり、家計はお初の内職に頼るばかりになっていました。

そんななか、太吉が高価なカステラを持って帰ってきます。

誰に貰ったのかと聞くと菊の井の鬼姉さんだと答えます。

それを聞いたお初が激怒し、源七と口論になります。

結局、お初は太吉を連れて家を出て行ってしまいます。

お盆から数日過ぎた夜の日、街には二つの棺が運ばれて来ます。

それはお力と源七のものでした。

二人の死は、さまざまな憶測を呼びましたが、真相はわからずじまいです。

樋口一葉「にごりえ」の起承転結

【起】にごりえ のあらすじ①

新しい客

お力は丸山福山町の銘酒屋街にある料理店「菊の井」に酌婦としてつとめています。

店の中で一番若い酌婦で、店の看板娘でした。

かつては布団屋の店主である源七と恋仲でしたが、今は別れていて彼氏はいません。

一方の源七はお力に貢ぎすぎて破産したため、お金に余裕がなくなりお力のところへ通えなくなっていました。

今は、町外れにある長屋で妻のお初と息子の太吉と一緒にその日暮らしの苦しい生活を送っています。

それでも、お力のことを忘れられずにいました。

ですが、お力の方はよりを戻す気は全くありませんでした。

復縁してはどうかと勧めてくる同僚に「お気遣い、どうもありがとう。

私はどうも彼んな奴は虫が好かないから、無き縁とあきらめて下さい」とまるで他人事のように言います。

ある日、お力は雨のせいで客足が途絶える中、客引きをしていました。

そこに三十代くらいの紳士風の男が通り掛かります。

この人を逃してはならないと思ったお力は追い縋って店にくるように頼み込みます。

すると、器量の良さが功をそうして店に来てくれました。

男の名前は結城朝之助といい、自分から道楽者を名乗っていますが、誠実なおりおり見える妻子のいない、無職者です。

朝之助はお力を気に入って、彼女に会う為に週にニ、三回は店に来てくれるようになりました。

お力も朝之助が三日も店に来ないと手紙を出す様になります。

その様子を見て同僚は源七が見ると気違いになるかもしれないと冷やかしました。

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【承】にごりえ のあらすじ②

源七とお力

ある月の日の夜、下座敷にはどこかの工場の職工たちが入り、おおかたの女はそちらにかかりきりで、二階の小座敷には朝之助とお力のふたりきりになります。

朝之助が寝転んで愉快そうに話しかけるのを、お力はうるさそうに生返事をします。

しばらく話していると、下座敷から食器を運んできた女が何やらお力に耳打ちして、「ともかく下までおいでよ」と言いました。

しかし、お力は「お目にかかったってお話もできませんと断っておくれ。」

と顔をしかめます。

朝之助は「遠慮する必要はない。

会って来るといい、なんならここに呼びたまえ」と言いましたが、お力は源七のことを話すと表を見下ろしてもう帰ったようだと伝えます。

朝之助が源七の見た目や心意気について聞くと、見た目は不動明王に似ていて人が良いばかりでなんの取り柄もない人だと言います。

それではどこに惚れたのかと聞くと、おおかた、惚れやすい性分なのでしょうあなたの事も夢に見ない日はありません。

と答えます。

お力は縁側に出ると朝之助を呼びました。

そこからは行き交う人々の姿がよく見えます。

「あそこの果物屋で桃を買っている子がいるでしょう。

あの子がさっきの人の子です。

子ども心にも憎いと思うらしく、私のことを鬼と言います。

そんなに悪者に見えますか」と息をつきます。

堪え兼ねた様子が声に表れています。

一方、源七はお力を思うあまり食事も喉を通らない有り様でした。

それに対して妻のお初は「騙されたのは此方の罪で、考えても始まることではおりません。

もうそんな考え事は辞めにして、機嫌良くご飯を召し上がってください。

太吉まで沈んでしまいました」と言います。

太吉を見ると父と母を見比べて何も知らないけど気になる様子です。

源七は未練がましい自分を叱りつけて「俺だって、いつまでも馬鹿ではいられない」と言いました。

しかし、お力への未練を捨てられない様子です。

【転】にごりえ のあらすじ③

お力の身の上

誰が言い始めたのかはわかりませんが、お力を含めて男性にお酌をする酌婦は、白鬼と呼ばれています。

しかし、彼女達も人の子なので愛しい人を思って思案に暮れる人もいれば、我が子を思って夕暮れの鏡の前で涙ぐむ者もいます。

お力は、そんな酌婦の仕事をしながらも、将来に対して漠然とした不安を抱えていました。

お盆の日、その不安につぶされそうになったお力は、仕事中にお客を残して町へ飛び出してしまいます。

当てもなく町を歩き、心細くなって足を止めた途端、肩を叩かれます。

振り返ると朝之助がいました。

お力は朝之助と菊の井まで戻ります。

客を置いて途中でいなくなるなんて何事だ顔を見せろと怒る客に対して体調不良だと言い訳をすると、そのまま朝之助を接待します。

そして、今まで誰にも話していなかった身の上話を朝之助に話始めます。

漢籍をしていた祖父のこと、職人だった父のこと、なけなしの金を持って買いに行った米を氷に滑って落としてしまい、心配した母が迎えに来るまで泣いていたことなどを話します。

お力は溢れる涙をハンカチに押しつけて、30分は黙っていました。

顔を上げる頃には涙の跡こそ見えるものの微笑みすら浮かべています。

「貧しい家庭に生まれて酌婦なんかをやっている自分は、もう這い上がれない」と嘆きました。

それを聞いた朝之助は、「お前は出世したいんだな」「思い切ってやればいい」と言います。

その夜、帰ろうとする朝之助をお力が引き止めて、二人は朝まで過ごしました。

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【結】にごりえ のあらすじ④

心中

お力への思いから仕事に行く気も無くなった源七に対して、お初は少しは太吉の事を思って真人間になってくれと嘆きますが、源七はそれでも仰向けに寝転がったままで働こうとしません。

お初が心細く戸の外を眺めていると帰ってくる太吉の姿が見えます。

なにやら大きな袋を両手に抱えて、「母さん、母さん、これ貰って来た」とにっこり笑うので見てみると、高級店のカステラでした。

こんなにいいお菓子を誰から貰ったのかと聞くと、菊の井の鬼お姉さんだと答えます。

それを聞いたお初は激怒して、太吉を馬鹿野郎と罵ってカステラを空き地へと投げ捨てます。

それを見た源七は起き上がると「知った子供に菓子をくれるのになんの不思議もなく、貰ったところで何が悪い。

馬鹿野郎呼ばわりは太吉にかこつけて俺への当てこすり」と叱りつけます。

言い争いの末にお初は太吉を連れて家を出て行きました。

お盆から数日たったころ、町には二つの棺が運び込まれました。

それは源七とお力のものでした。

二人の死はさまざまな憶測を呼び、二人が一緒にいるところを見たという証言があるのだから合意の上だったに違いないという者もいれば、あの女が心中などするものか逃げるところを背後から斬りつけられたに違いないという者もいます。

諸説が入り乱れて確かなことはいえませんが、人魂か何か知らない筋を引く光りものが、お寺の山という小高いところから時折り飛んでくるのを見たという者が伝えられています。

樋口一葉「にごりえ」を読んだ読書感想

にごりえは樋口一葉の代表作のひとつです。

短編小説ではありますが、心理描写が繊細で長編の小説を読んだかのような読み応えがあります。

銘酒屋町を舞台に大人の恋愛をテーマにした作品で、かなり現実的な内容をしています。

商売女と客が最後に心中する話なんて聞けばよくある話だと思うかもしれませんが、この作品の凄いところは心中する前の描写が一切かかれていないところです。

本来、男と女が心中する前なんて物語で一番重要な部分となるはずですが、あえて描写しない事でいろいろな解釈をすることができて物語に深みが出ています。

結局、無理心中だったのか合意の上だったのかはわからないまま終わってしまいます。

どちらにせよ、源七は愛しているはずのお力を殺してしまったということには代わりありません。

殺したいほど誰かを愛するって恐ろしい事ですね。

愛は素晴らしいものだと言いますが、行き過ぎると身を滅ぼします。

源七のように女の人に入れ上げて身を滅ぼすというのは現代でも通じるところがあるのではないでしょうか。

出版されてから百年以上たった今でも違和感なく読める作品です。

-樋口一葉

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