斜陽 太宰治

太宰治

太宰治「斜陽」のあらすじを徹底解説、読んでみた感想

著者:太宰治 1947年7月に新潮社から出版

斜陽の主要登場人物

かず子(かずこ)
この作品の主人公。没落貴族の娘で、荒れ果てた生活を送る。

直治(なおじ)
戦地で麻薬中毒になっていたかず子の弟。現実から目を背けがち。

母(はは)
没落していく現実を受け入れられないかず子の母。

上原(うえはら)
直治の友人。既婚であるがかず子と関係を持つ。

1分でわかる「斜陽」のあらすじ

戦争の影響で没落貴族となったかず子と母は、住み慣れた屋敷を捨て山荘での生活を安穏に続けていましたが、戦争で行方不明となっていたはずの堕落した弟直治が帰ってきてしまいます。

弟が麻薬中毒で作った借金を返済するためのお金を受け取りに赴いた小説家・上原の家で、かず子は素早くキスをされ上原に好意を寄せるようになります。

肺結核となり最後の貴族としての誇りを胸に死にゆく母を見取りながら、かず子は「経済史入門」や「社会革命」などを読みふけり革命を起こすことを心に誓うのです。

自身の恋愛感情の赴くままに上原のもとを訪ねたかず子はかねてより願っていた上原との子どもを授かり革命を成功させました。

太宰治「斜陽」の起承転結

【起】斜陽 のあらすじ①

没落貴族の堕ちゆく生活

爵位の地位を持っていたかず子の父の死後、かず子と母は叔父に養われ東京の家で暮らしていましたが、戦争の影響で叔父の財政状態が苦しくなり東京の街を離れることを決断します。

都会である東京での優雅な暮らしを忘れられないかず子の母は、田舎町である伊豆の山荘での安穏な生活に嫌気がさし次第に体調を崩していきます。

そんな中、かず子は戦地に赴き行方不明になっていた弟である直治が実は生きているのだということを母から聞かされます。

弟の直治は高校時代に小説を書くことにはまり、とある小説家の影響を受けて麻薬中毒者となった後、戦地に召集され南方で行方不明となっていたのです。

母に麻薬中毒で薬屋に作った借金を返済させ家族に迷惑をかけた直治が帰ってくるというだけで家族にとっては地獄だったのです。

さらに、家庭の金がほとんど底をついてしまったというバッドニュースも聞かされます。

財政状態が苦しくなった叔父は弟の養生をさせるためにはかず子の嫁入り先やご奉公先の家を探すしかないとしてかず子たちに提案しますが、自身の未来を決められるのは敵わないとかず子は拒否します。

また、弟やかず子に最後の貴族だ、と言わしめるほど貴族意識が高く貴族としてのプライドを捨てきれなかった母は、いっそ家にあるものを売り払いぜいたくな暮らしをすればよいではないか、などと提案をしてきます。

このように堕落した弟直治の存在や財政状態の悪化により徐々に家庭の歯車が崩れ没落貴族としての道をかず子たちは歩んでいくことになります。

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【承】斜陽 のあらすじ②

上原とのひめごと

かず子が予期していた通り、直治が帰ってきてからの生活は本当にひどいものでした。

戦争が終わり養生という形で山荘に帰還してきた直治ですが、家にある衣類などを勝手に売りとばし、そのお金で東京に通い詰めていました。

彼には上原というあこがれの小説家がいて、以前から関係を持っていましたが、麻薬中毒となってしまいかず子に会わせる顔がない直治は上原にお金の受け取ってもらうようになります。

ある日「薬屋に返済するためのお金を渡しに上原の家に行ってくれ」と直治に言われたかず子は上原の家に向かいますが、そこで上原に「弟をアルコール依存症にさせることで麻薬中毒から解放すればよい」といった旨の話を持ち掛けられそこで妻帯者であるにも関わらず上原に素早くキスをされてしまいます。

上原の元へ直治が通うようになった時からかず子は上原の書く小説を読んでいたこともあり、これを機に上原に好意を寄せるようになってしまいます。

自分と妾としてかかわりを持ち上原の子どもを妊娠させてほしいと手紙を書き数回出しますが、上原から返事が返ってくることはありませんでした。

どうしても上原のことをあきらめきれなかったかず子はついに上原に直接会いに行くことを決意し、東京に向かう身支度を始めます。

しかしちょうどその時に母が熱を出し倒れてしまうのです。

母親は山荘に住み始めたころから徐々に元気がなくなっていることをかず子は察していましたが不安から目を背けるように畑仕事などに精を出してしまっていたのです。

【転】斜陽 のあらすじ③

最後の貴婦人、母の死

病床に臥した母を医者に診てもらったところ母は肺結核と診断されました。

医者には手のつけようがないといわれ母親の命が長くないことをかず子と直治は知ります。

かず子は残り短い母を見取るために看病をしつつ手に取ったローザンクセンブルグの経済史入門を読みふけります。

本来であれば全くジャンルが異なりシンパシーを感じる点などあるはずのない本ではあるものの、かず子は著者の従来存在していた固定概念に対して真正面から挑戦し壁を乗り越えていく姿勢に奇妙な興奮を覚えました。

妻子持ちの小説家上原に恋をしてしまったかず子はそれまで自身の気持ちをよくないものであるとして考えていましたが、自分の恋愛感情の赴くままに行動してよいのだ、とこの本を読んで感じます。

自身の思い描いた従来存在する道徳という既成概念の壁に向かって真正面から挑戦し自分の恋の成就を目指す人妻の姿勢に憧れかず子は革命を起こそうと決意します。

そして十月のある日、最後まで貴族としての誇りを持ち続けたかず子の母が他界します。

かず子は母の死後、いつまでも悲しみに暮れている場合ではないと考え自身の心に秘めた行動指針に従い、改めて上原に会いに東京に向かうことを決意します。

ローザが新しい経済学にすがる必要があったことと同じように自身も恋愛感情にすがらなければならないのだ、と考えていたのです。

母の密葬を伊豆で済ませ、しばらく弟直治と気まずい生活を送った後、かず子は上京をして上原のいる荻窪に赴きます。

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【結】斜陽 のあらすじ④

革命の成功と失敗

上京をしてまで自分の思い人に会いに行ったかず子ですが、六年越しに上原を見て落胆します。

彼は大変おいており、六年前の見る影もなかったのです。

上京を下はいいものの泊まるところを確保していなかった和子を上原は自身の知人の家まで送りそこで関係を持とうとします。

それまで自身が思い描いていた姿とあまりに乖離していた上原の荒れ果てた姿に落胆していたかず子は、最初は抵抗するものの次第に自分に恋の気持ちがあることに気づき上原と関係を持つことを決意するのです。

そんなかず子とは裏腹に弟の直治はその日の朝に首をつって自殺していました。

残していた遺書には戦地で知り合った兵隊や学校でできた民衆の仲間とは自身が貴族であるという身分の違いから真に打ち解けることができずにいて酒や麻薬におぼれ中毒になったことが記されていました。

また、実は彼にもスガちゃんという洋画家の思い人がいたものの、その人は自身の尊敬していた上原の妻であり自分の気持ちを諦めるために東京で放浪をしていたこと、結局諦めきれず最愛の母を失い生きる理由を失ったために自殺をするといったことまで記されていました。

関係を持ち子どもを身ごもったかず子は上原に捨てられてしまいますが、やり遂げた気持ちの方が強く不思議と屈辱感などは覚えていませんでした。

死んだ直治のために生まれてくる子供をスガちゃんに抱かせたいという旨の手紙を上原にしたため、かず子は自身の革命の成果でもあるおなかの中の子どもをなでるのでした。

太宰治「斜陽」を読んだ読書感想

太宰治の名作である斜陽です。

この物語で出てくる「没落」という言葉が辞書に載るほど社会に対する影響力は強く、没落していく貴族家庭の中でも貴族の誇りを捨てきれない母と民衆と打ち解けきれなかった弟直治、だらしない上原に好意を寄せるかず子をしっかりと書き分けそれぞれの貴族という価値観に対するスタンスを明確にしていた点が良かったと感じます。

物語の中で最も大事なのは「革命」だと思いました。

自身の恋という気持ちにしっかりと向き合ったうえでその成就のために既成概念に真正面から挑戦し革命を成功させたかず子と、自身の恋という気持ちをひたすらに押さえつけ諦めてしまい最終的に自殺した弟直治。

この二人の対比が革命の成功と失敗を表しており、革命の成功を昼ととらえ革命の失敗を夜ととらえその中間となる夕方の太陽をイメージして斜陽という題名をつけたのではないかと私は感じました。

貴族としての誇りや心持ちがあるか否か、という点が没落貴族であるかず子の家庭の中でも人生の選択の岐路になったのかなと考えています。

-太宰治

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