著者:恩田陸 2004年7月に新潮社から出版
夜のピクニックの主要登場人物
〈名前〉甲田貴子(こうだたかこ)〈説明〉本作の主人公。西脇融とは異母きょうだい。歩行際である賭けをする。〈名前〉西脇融(にしわきとおる)〈説明〉貴子とは異母きょうだい。歩行際前に膝を怪我している。貴子のことを嫌っている。〈名前〉遊佐美和子(ゆさみわこ)〈説明〉貴子の友人。老舗の和菓子屋の娘で大和撫子。〈名前〉戸田忍(とだしのぶ)〈説明〉融の友人。融が貴子に好意を持っているのではないかと疑っている。〈名前〉榊順也(さかきじゅんや)〈説明〉貴子の友人である榊杏奈の弟。歩行祭に参加するためにアメリカから日本にやって来た。杏奈の好きな人を探している。
1分でわかる「夜のピクニック」のあらすじ
北高に通う高校3年生の甲田貴子は、最後の行事にある賭けを自分に課します。
賭けの内容は、西脇融と話すことでした。
しかし、歩行祭が始まったものの、貴子は融に話しかけることができませんでした。
そんなとき夕方に、同級生の高見光一郎から融の誕生日パーティーに誘われます。
そこで、貴子と融は初めて言葉を交わし、最初の賭けに勝ちます。
歩行祭も終盤になり、貴子は友人の美和子と一緒に歩きます。
その途中、怪我をした融と、一緒に歩いていた忍を見つけます。
貴子たちは、少しでも負担を軽くしようと思い、融の荷物を持って4人で歩きます。
その後、融と2人で歩いていた時に、 貴子は融に自分に課した賭けの話をしました。
そして、賭けの話を聞いた融は、貴子に卒業後に貴子の家に行くことを約束します。
こうして貴子と美和子、融と忍の4人は笑顔で歩行祭を終えました。
恩田陸「夜のピクニック」の起承転結
【起】夜のピクニック のあらすじ①
北高には、北高鍛練歩行祭という行事がありました。
生徒からは歩行祭と呼ばれるこの行事は朝の8時から翌朝の8まで、休憩や仮眠を挟みながら、80キロメートルもの道を歩くという行事です。
北高に通う甲田貴子は、高校生活最後の歩行祭である賭けを試みます。
貴子には、同じクラスに気になっている人がいました。
その人物の名は西脇融といいます。
歩行祭の最中に、貴子は友人と雑談をしながら歩いていました。
そのときに友人の1人から、貴子と融が似ていると言われます。
貴子には、秘密にしていることがありました。
その秘密とは、貴子が融の父親とその浮気相手の貴子の母親との間に出来た子供であり、融とは異母きょうだいという関係があることです。
2人はこの事を誰にも話さなかったため、学校内で知る人は1人もいませんでした。
2人は高校入学前、融の父親が胃がんで亡くなったときに、葬儀の場で、初めて顔をあわせました。
事前に自分の境遇を、母親から説明されていた貴子は、きょうだいである融と親しくなりたいと思っていましたが、融はそうは思いませんでした。
融は父親の浮気を恥だと思い、浮気した父親の子供である貴子に憎しみを向けました。
そして、2人は同じ学校に入学しますが、入学してから2年間は別のクラスだったので、顔をあわせることはありませんでした。
しかし、3年生になって同じクラスになり、貴子はこのまま融と話もせずに卒業することに迷いを感じていました。
そして、貴子は賭けに勝ったら融と自分達の境遇について話をするという賭けをすることを決意しました。
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【承】夜のピクニック のあらすじ②
あれから夜になり、去年の思い出に浸っていた貴子は、高見光一郎から融の誕生日パーティーに誘われます。
12時に迎えに来ると言い残し、高見光一郎は別の生徒に声をかけに駆け去っていきました。
やがて、休憩所についた貴子たちは、そこで夕飯を食べました。
夕飯を食べ終わり、住宅街を歩いていると、向かいを黒い野球帽をかぶった少年が歩いていることに気づきました。
少年は榊順也と名乗りました。
順也は貴子の友人である榊杏奈の弟で、歩行祭に参加するためにアメリカから日本に来ていました。
杏奈の好きな人に興味を持っていた順也は、貴子に杏奈の友人のきょうだいは歩行祭に参加しているかと問いかけます。
杏奈の好きな人は友人のきょうだいのなかにいるようです。
その発言を聞いた貴子は、杏奈が貴子のきょうだいが融であると知っているのではないかと直感します。
その後順也と別れ、休憩していた貴子は高見光一郎に連れられて、融の友人の戸田忍と合流しました。
しかし、近くに融の姿が見当たりませんでした。
辺りを見回していると、融は内堀亮子という少女に話しかけられていました。
内堀亮子は融のことが気になっていて、誕生日プレゼントを渡しに来ていたのです。
内堀亮子が去ったあと、貴子たちは、誕生日パーティーを始めました。
そして、貴子は暗闇のなか、融に「誕生日、おめでとう」と言いました。
すると、融から「ありがとう」と返事が返ってきます。
貴子はこの日、最初の賭けに勝ちました。
その駆けの内容は、融に話しかけて、返事をしてもらうことでした。
そのあと美和子と合流した貴子は、順也に杏奈の好きな人が貴子か美和子のきょうだいのなかにいる、と告げられたことを美和子に話します。
しかし、美和子はなんでもないことのように「西脇君のことよね」と返します。
融との関係は誰にも知られていないと思っていた貴子は、その言葉を聞いて混乱してしまいました。
【転】夜のピクニック のあらすじ③
第一チェックポイントを出た貴子は、杏奈と美和子がゴールデンウィークに遊びに行ったときに、貴子の母親から全てを打ち明けられたことを美和子から告げられます。
美和子と話している最中に、杏奈から来た葉書の内容を思い出します。
葉書に書かれた「おまじない」のことを美和子に話しましたが、心当たりはないようでした。
そんなことを話しながら歩いていると、足首を捻挫して横たわっている融と、一緒に歩いていた忍を発見します。
融はなんとか痛みがないように歩こうとしますが、その足は腫れていました。
それを見た美和子は、貴子と美和子と忍の3人で、融の荷物を手分けして持つことを提案します。
融は渋りましたが、最終的にはその提案を受け入れました。
4人が歩いていると、再び順也に会いました。
暫く雑談をしていましたが、融の名前を聞くと、杏奈の友達にきょうだいがいるだろうと問いかけました。
4人のなかで唯一なにも知らなかった忍は、順也の言葉を否定しましたが、貴子と融の表情を見て全てを悟りました。
そして、友人に隠し事をされていたと知り、傷つきました。
融と忍は無言で歩き続けます。
そんな2人の様子を見て、順也は自分の発言が悪い結果をもたらしたことに気づきました。
杏奈に怒られると嘆いていた順也に、美和子は「大丈夫だよ」と言いました。
そして、順也に「杏奈におまじないは効いたと伝えておいて」と頼みます。
杏奈のおまじないとは、順也のことでした。
杏奈は順也の隠し事ができない性格を利用して、貴子と融に仲直りしてもらおうという計画を立てていました。
貴子達がおしゃべりをしている間に、融は忍に自分の境遇について話していました。
そして、融が謝ったことで、忍は悩みを打ち明けなかったことを許しました。
最後のチェックポイントにたどり着いた貴子たちは、そこで高見光一郎に会います。
高見光一郎と他愛のない話をしていると、そこに内堀亮子がやって来ました。
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【結】夜のピクニック のあらすじ④
内堀亮子は、融と一緒にゴールするために、近くの公園で待ち伏せしていました。
そして、融と忍の前にやって来て、強引に割って入ります。
それを見かねた貴子たちは、なんとか出来ないものかと考えていました。
そこに、高見光一郎がやって来て、他の男子生徒と一緒に内堀亮子に声をかけました。
それを見た忍と美和子は高見光一郎に加勢しに行きます。
内堀亮子と高見光一郎達が去ったあと、貴子と融は2人並んで学校に向かって歩いていきます。
道中、融から気が紛れる話をしてほしいと頼まれた貴子は、自分に課した2つの賭けについて話します。
1つ目の賭けは、歩行祭の間に一言でも融と話すことでした。
貴子は、今まで融と話したいと思っていましたが、このまま融と話せないのではないかと思っていました。
なので、歩行祭の間に一言でも融と話せたらいいと思っていました。
そして、もし融と一言でも話すことができたなら、2つ目の賭けを実行しようと思っていました。
2つ目の賭けは、融を貴子の家に誘うことでした。
最初は父親のお墓参りに誘うつもりでしたが、これからのことを考えた貴子は、融に貴子の母親に会ってほしいと考え直しました。
貴子の話を聞いた融は、卒業後に貴子の家に行くことを約束します。
こうして貴子は、2つ目の賭けに勝利しました。
融と別れた貴子は、美和子と、貴子と別れた融は、忍と一緒に歩きます。
北高前の坂を上っているとき、貴子は歩行祭の終わりを実感しました。
貴子と美和子、融と忍の4人は笑顔で歩行祭を終えました。
恩田陸「夜のピクニック」を読んだ読書感想
私がこの本を読んだきっかけは、夜のピクニックという題名から、どのような物語になるのかがわからなかったからでした。
この本の内容は、主人公である甲田貴子が、高校生活最後の行事である歩行祭を舞台に、今まで声をかけることができないでいた人物と、話し合うというものでした。
私がこの本で注目したことは、貴子の物語ではなく、貴子を通して語られる歩行祭の様子でしたこの本で語られる歩行祭という行事は、朝8時から翌朝の8時まで、休憩や仮眠を挟みながら80キロの道を歩くという過酷な内容でした。
しかし、貴子達は足が痛いと言いながらも、その長くて辛い道を友人達と話したり、励まし合ったり、助け合ったりしながらゴールまで歩いていきます。
私はこの歩行祭の様子をを、生きていくことに似ていると思いました。
生きていれば辛いことや、困難なことが毎日のように有ります。
しかし、私は諦めずに歩いていけばゴールにたどり着くことができるということを、この本を読んで学びました。