雪国の主要登場人物
島村(しまむら)
親譲りの財産で生活をしている中年男性。東京に妻子がいる。
駒子(こまこ)
雪国の温泉街で奉公をしている芸者。行男の幼馴染み。
葉子(ようこ)
行男の恋人で、行男を看病している。
行男(ゆきお)
病気を患い、温泉街に帰ってきた青年。駒子の許嫁だったが、今は葉子と付き合っている。
1分でわかる「雪国」のあらすじ
東京に妻子を持ち、親譲りの財産で暮らしていた島村は、雪国の温泉街で、駒子という芸者に出会います。
島村は駒子の一途な生き方に惹かれていきますが、一方で駒子の自分に対する真っ直ぐな愛情を、徒労だと感じるようにもなります。
そして、そのうちに島村は駒子とは違った性格の葉子にも惹かれていました。
とはいえ島村は、駒子を見捨てることも出来ず、ゆきずりの愛を静かに育んでいきます。
結ばれない恋と知りながら、その想いをひたすらに突き通していく、哀しくも美しい文学作品です。
川端康成「雪国」の起承転結
【起】雪国 のあらすじ①
島村は、芸者の駒子に会いに行くため、冬の寒い時期に雪国に向かっていました。
その途中の汽車の中で、葉子という魅力的な女性に出会います。
葉子は悲しいほどに美しい声をしていて、隣に座る行男という病人を、まめまめしく看病している女性でした。
そして、汽車を降りると、島村は行男が駒子の師匠の息子であることを知ります。
島村はその事実をなぜか不思議と思うこともなく、駒子に早速会いに行きます。
そして、駒子との会話の中で、出会った時のことを思い出し始めます。
出会った頃の駒子は19歳でしたが、歌舞伎の話などにも精通していて、島村にとっていい話し相手になっていました。
しかし、島村はそんな駒子に対して、世話をしてくれる芸者を呼ぶよう頼みます。
嫌がる駒子でしたが、島村は芸者を目の前にしてある事実に気づきます。
結局、自分が欲しかったのは、最初から駒子だったということを思い知るのです。
そのことを駒子に打ち明けると、駒子はその夜、酔った状態で島村の部屋に入ってきます。
そして、お友達でいようと決めていたし、こんな関係は長続きするものじゃないと分かっていながらも島村に気があることを伝えるのでした。
そして、島村は駒子のその真剣な響きに心を打たれてしまうのでした。
そうして、まだ夜が明けないうちに、駒子は人目を恐れながら、慌ただしく1人で抜け出して帰ってしまいました。
そして島村も駒子を見送ると、その日のうちに自分も東京に帰ったのでした。
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【承】雪国 のあらすじ②
そうして現在、島村と駒子は談笑をしていました。
島村は駒子が日記を付けていることを知ると、その内容に徒労を感じずにはいられませんでした。
そんな中、島村は駒子の家にお邪魔することになります。
島村は、その家に行男がいることを知っていたため、行くのを躊躇いますが、その事をかえって駒子に咎められてしまうのでした。
そして、駒子は行男が26歳で療養のために温泉街に戻って来たことを島村に教えます。
しかし、肝心の葉子については、何も話さないままでした。
すると、そんな時にまた、あの悲しくも美しい葉子の声が聞こえてきます。
葉子はチラッと島村を見ただけで、そのまま土間を通り過ぎただけでした。
しかし、島村は葉子のなんとも言えぬ美しさに胸を震わせていました。
そして、駒子の家を出ると、島村は女按摩から行男は駒子の許嫁で、葉子の新しい恋人だということを知るのでした。
次の日、島村は駒子に昨日のことを尋ねますが、駒子は行男とはただの幼馴染みだということを伝えます。
そして、島村は駒子の曲を聞きながら、駒子と自分が想いあっていることを痛感するのでした。
そうして、島村が東京に帰る日、島村を見送ろうとする駒子の前に、葉子がやってきます。
なんと、行男が危篤になり、駒子を呼んでいるのです。
しかし、駒子は決して行男のもとへは行かず、島村を見送ろうとします。
島村も駒子に行男のもとへ帰るよう説得しますが、最後には結局諦め、駒子はそのまま駅で島村を見送るのでした。
【転】雪国 のあらすじ③
秋が近づき、島村はまた雪国の温泉街に来ていました。
そして、駒子から行男が亡くなったこと、その後に師匠も亡くなったことを知らされます。
駒子はもう21歳になっており、師匠が亡くなった今は、違う家に奉公に出ているようでした。
島村は、3年のうちに温泉街を3回訪れていましたが、そのうちいつも、駒子の境遇が変わっていることに気づきました。
そして駒子は、自分には17の時から5年も続いている恋人がいることを、初めて島村に告白します。
ちなみに葉子は、行男の死後、お墓参りばかりしているようでした。
島村は一緒に墓参りに行こうと駒子を誘いますが、駒子はそれを拒絶します。
結局、墓の前まで来ますが、墓参りをする葉子を前に、駒子は最後まで手を合わせることはしませんでした。
その後、葉子が駒子の手紙を持って島村の部屋へ訪れます。
そして、島村に自分も一緒に東京へ連れて帰って欲しいと頼むのです。
そして、島村に駒子が憎いことを伝えた後で、島村は駒子に良くしてあげて下さいなどと頼むのでした。
その後、島村は駒子に「いい女だね」と褒め言葉を伝えます。
しかし、駒子は別の意味に受け取り、島村の前で泣きくたびれるのでした。
結局、島村は妻子がいることも忘れ、この雪国で長い逗留をしてしまいます。
とはいえ、駒子のひたむきな愛情に向き合うことも出来ませんでした。
そして、次に東京に戻ったら、もうここには来ないだろうということを予感していたのでした。
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【結】雪国 のあらすじ④
別れを予感しながらも、離れられないでいる島村と駒子でしたが、ある日、2人で夜道を歩いていると、火事の知らせが入りました。
その現場は、どうやら駒子の亡くなったお師匠さんの家の辺りのようでした。
急いで行ってみると、繭蔵が燃えているらしく、今日は映画でたくさんの人も繭蔵にいるようでした。
火事現場まで行こうと、雪道の中、天の川が垂れ下がる山へと駒子は走り出します。
そして、その後を島村も追って行きました。
2人で現場に向かいながら、駒子は島村が東京へ帰ったら自分は真面目に暮らすことを誓います。
やがて火事現場まで着くと、島村はたくさんの人目が気になり、そっと駒子から離れました。
しかし、いつの間にか駒子は島村のそばにやって来ていて、2人は手を握ります。
そして、火の粉と天の川が広がった夜空を眺めているうちに、島村は駒子との別れが近いことを痛感するのでした。
そのうちに、あっと人垣が息を呑んで、女性の体が落ちるのが見えました。
形ばかりの2階の客席から、葉子が落ちたのです。
葉子の目は痙攣をしたうち、失神をしたようでした。
島村は葉子の死こそ感じませんでしたが、中の生命が変形する移り目のようなものを感じていました。
そのうちに駒子が、急いで叫びながら、葉子のもとへと駆け寄ります。
島村は駒子に近づこうとしますが、男達に押されてよろめいてしまいました。
そして、目を上げた途端に、天の川がサーッと音を立てて島村の中へ流れ落ちるのを感じたのでした。
川端康成「雪国」を読んだ読書感想
駒子のひたむきな愛情と、それを徒労と感じてしまう島村の感情がもどかしく、悲しくも美しい作品でした。
特に、文章の表現がどれも秀逸なので、本当に魅力的です。
最後の火事現場の中で、島村の心の中に天の川が流れ込むという表現も素晴らしく、ラストがとても印象に残っています。
また、「雪国」は登場人物それぞれが、徒労に感じる想いをずっと引きづっているので、その辺も面白いです。
だからこそ、駒子と葉子の関係性も複雑で、互いに憎いけど切っても切れない縁がある感じが否めませんでした。
最初と最後の葉子のシーンも重なる部分があり、何度も読み返してみると違った解釈も出来そうなのが、また面白い所です。
島村の妻子については、一切出てきませんでしたが、物語のその後が気になって仕方ありません。
駒子はずっと雪国と葉子に縛り付けられて、そこで暮らしていくのか、島村はまた会いに来てくれるのだろうかなどと、いろんな考察が考えられるラストになっていて、惹き付けられる終わり方になっていました。