著者:サン=テグジュペリ 2006年3月に中央公論新社から出版
星の王子さまの主要登場人物
ぼく
物語の語り手。砂漠に不時着した飛行士。
王子さま(おうじさま)
小惑星から1年前に地球へやってきた男の子。砂漠で「ぼく」と出会う。
バラの花(ばらのはな)
とても美しいが勝ち気な性格のバラ。王子さまが故郷を離れる原因になった。
狐(きつね)
王子さまが落ち込んでいるときに現れ、友だちになった。
1分でわかる「星の王子さま」のあらすじ
人の住む場所から遠く離れた砂漠に不時着した飛行士の「ぼく」は、不思議な男の子と出会います。
男の子は遠い星から地球へやってきた王子さまでした。
王子さまの出会った人々や感じたこと、さまざまな話を聞くうちに2人の間には絆が生まれます。
しかし王子さまには自分の星に帰るための計画があったのです。
2人は悲しみながらもお別れをし、それから6年。
ぼくは夜になると星たちの声に耳をすまし、王子さまはどうしているだろうかと想像を巡らせ、嬉しくなったり悲しくなったりするのでした。
サン=テグジュペリ「星の王子さま」の起承転結
【起】星の王子さま のあらすじ①
6歳の時、ぼくはジャングルについて書かれた本で「ウワバミは獲物を噛まずにまるごと飲みこみ、半年のあいだ眠りながら飲みこんだ獣を消化する」ということを知り、ウワバミに飲まれたゾウの絵を描きます。
しかし大人たちは、その絵を帽子だとしか思いません。
そしてウワバミの絵なんか放っておいて勉強をするようにと忠告するのでした。
大人たちにがっかりし、絵描きの夢を諦めたぼくは、別の職業を選び飛行士になります。
たまに聡明そうな人に出会うと、6歳の頃に描いたウワバミの絵を見せてみますが、誰もがその絵を帽子だと言い、わかってくれる人はいないのでした。
ある日、ぼくの操縦していた飛行機が故障して砂漠に不時着してしまいます。
最初の夜、孤独に耐えて眠っていると、おかしな小さな声に呼び起こされます。
そこにはぼくを見つめる不思議な男の子がいました。
人の住んでいる地域から遠く離れた砂漠にいるにもかかわらず、男の子は少しも途方に暮れている様子はありません。
ぼくは男の子に、こんなところで何をしているのか訊ねます。
しかし男の子は彼の質問には全く答えてくれず、おとなしい羊を描いてと繰り返します。
ぼくが試しにウワバミに飲みこまれたゾウの絵を描くと、男の子は「ウワバミに飲まれたゾウなんかいらない」と拒否します。
初めてぼくの絵を理解してもらえたのです。
そこでぼくは羊の絵を描きますが、男の子はなかなか出来栄えに満足してくれません。
何度か描き直しましたが我慢できなくなり、箱の絵を渡して「欲しい羊はこの中にいるよ」と告げると、男の子は「こんなのが欲しかったんだ!」と喜ぶのでした。
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【承】星の王子さま のあらすじ②
男の子はこちらの質問には全く答えてくれませんが、彼の口をついて出てきた言葉から男の子が地球とは別の星からやってきた王子さまであることを知ります。
王子さまの星は家一軒ほどの大きさなので、バオバブがたくさん生えると破裂してしまいます。
そのため芽を食べてくれる羊が必要だったのです。
しかし、王子さまは自分の星にあるバラの花まで食べられてしまうのではないかと心配します。
そのバラは星でたった一輪だけ、どこからともなくやってきた種から咲いた花でした。
バラは見惚れるように美しいのですが勝ち気な性格で王子さまを振り回します。
王子さまはバラに恋をしていましたが、彼女のことが信じられなくなり惨めになって、自分の星から旅立ったのでした。
それから王子さまは仕事を探して勉強するため、別の星を訊ねていきます。
1つ目は誰でもみんな自分の家来だと思っている王様の星、2つ目は他人がみんな自分のファンだと思っている見栄っ張りの星、3つ目は恥ずかしいことを忘れるために酒を飲んでいるという呑兵衛の星、4つ目は忙しく星を数え続ける事業家の星、5つ目は街灯が1本と点灯夫が1人しかいない、とても小さな星です。
点灯夫は汗をかきながら街灯を消したり点けたりしています。
王子さまはこれまでの星のことを思い出して、自分以外のことに一生懸命なこの人だけは滑稽に見えないなと思うのでした。
6つ目の星は年老いた地理学者が1人で住む星です。
地理学者は探検家がいなくて記録ができないので、自分の住む星に何があるのか全く知らないと言います。
そしてやって来た7つ目の星が地球でした。
降り立ったのは砂漠だったため、人間の姿は見当たりません。
王子さまは人を探して旅するうち、花ざかりのバラ園へとたどり着きます。
そして自分の星に咲いたバラが、この世で唯一のものではないことを知り、ショックを受けるのでした。
その時、王子さまの前に1匹の狐が現れました。
狐は自分を飼い慣らしてくれと提案します。
飼い慣らすとは、絆を創るという意味なのだと言います。
今は王子さまにとって、狐はたくさんの狐のうちの1匹に過ぎず、狐にとって王子さまは大勢の少年のうちの1人に過ぎないけれど、飼いならせばお互いが唯一の存在になるのだと狐が語ります。
そうして彼らは友達になり、王子さまは自分のバラは自分にとって唯一のものであると気づいたのでした。
【転】星の王子さま のあらすじ③
ぼくは王子さまの話を聞きながら、懸命に飛行機の修理をしますが上手くいきません。
飲水もなくなり井戸を探して歩き、やがて夜になりました。
砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだという王子さまの言葉に、ぼくは驚きます。
砂漠の砂が神秘的な光を放っているように感じていたからです。
眠ってしまった王子さまを大切に抱き上げて、ぼくはまた歩き出します。
王子さまの寝顔が胸を打つのは、一輪のバラへの一途さがランプの?のように光を放っているからだ、ランプの?は消えないように護らなければならない、そう思いながら歩いていくと夜明けに井戸が見つかったのでした。
王子さまはぼくの汲み上げた水を飲み、ぼくはまた王子さまのために絵を描きます。
それを彼にあげる時、ぼくの胸に痛みが走りました。
王子さまには何か計画があるのではないかと感じ、訊ねますが答えはありません。
ただ、明日は地球に降りてきて1年の記念日だということ、この近くに降りてきたことを告白します。
そして、ぼくに飛行機の元へ戻り、明日の夕方また来てくれるよう伝えるのでした。
翌日の夕方、飛行機の修理を終えたぼくは井戸へ向かい、王子さまが黄色の毒蛇と話をしているのを聞いてしまいます。
王子さまは今夜、蛇の毒で星へ帰ろうと計画していたのです。
ぼくは王子さまの笑う声が二度と聞けなくなることを考え、寒気を覚えます。
王子さまは、自分は無数の星の1つで笑うから、夜空を見上げるとすべての星が笑っているように見えるはずだと笑うのでした。
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【結】星の王子さま のあらすじ④
夜になり、ぼくは抜け出した王子さまの後を追いかけました。
ぼくが王子さまの手をとると、遠いから身体は重すぎて持って行けない、わかってほしいと王子さまは言います。
ぼくは黙って王子さまの言葉を聞いていました。
ひとりきりでで行かせてねと王子さまは言いますが、やはり怖くなり座り込んでしまいます。
そして自分はあの花に責任があるんだ、とバラの花への思いを口にします。
これでもう言うことはない、と立ち上がり一歩踏み出した王子さまの踵のあたりに黄色の光が見えたその一瞬、彼は身じろぎすることもなく、叫び声もあげず、一本の木のように静かに倒れたのでした。
それから6年が経ち、ぼくはいくらか元気を取り戻しましたが、完全に立ち直ってはいません。
しかし、夜が明けた時に王子さまの身体が見当たらなかったことを思い、彼の身体はそんなに重くなかったのだろうと考えています。
ところが王子さまにあげた羊の口輪に、革バンドをつけていなかったことに気付きます。
ぼくは夜空の星を見上げて、王子さまと羊、バラの花に思いを馳せます。
王子さまは羊の口輪ができなかったはずです。
王子さまのバラを羊が食べてしまったらと思うと星のささやきは涙になり、そんなことはありえないと思えば、星は静かに笑います。
どこかで知らない場所で羊がバラの花を食べたかどうかで、この宇宙の一切はすっかり変わってしまうこと、そして大人は誰一人としてそれがそんなに大切なことだとわかりはしないだろうと、ぼくは読者に投げかけるのでした。
サン=テグジュペリ「星の王子さま」を読んだ読書感想
フランスの作家サン=テグジュペリの世界的に愛される名作です。
ぼくと王子さまの切なく優しい関係も魅力ですが、なんといっても心に留めておきたい名言がたくさん出てくるので、作中の言葉だけ聞いたことのある方もいるかもしれません。
読み返す度に新しい発見があり、じっくりと時間をかけて何度も味わいたくなる物語です。
特に大人というものに対する表現にはハッとすることも多く、いつの間にか大切なものがわからなくなっていないかと誰もが考えさせられると思います。
また、王子さまに気付きを与える狐の言葉はシンプルですが胸に深く刺さり、王子さまと一緒になって学んでいる気持ちになります。
王子さまの問いかけは本当に無邪気なので、自分ならなんと答えるだろうと想像しながら読み進めていくのも楽しいかもしれません。
人生に迷っている時や忙しくて心が疲れた時、この物語の中に勇気や安らぎを与えてくれる言葉がきっと見つかるのではないかと思います。