著者:村上春樹 2002年9月に新潮社から出版
海辺のカフカの主要登場人物
田村カフカ(たむらかふか)
本物語の主人公。実の父親から呪いをかけられ、家出を決意。本を読むことが大好きな少年で、自制心と地立真が強いが、抑制的で孤独を好む癖がある。
大島(おしま)
高松にある図書館の司書を務める人物。血友病患者であり性的少数者でもある。落ち着いて寝る場所がないカフカに図書館を宿として提供してくれる。
佐伯(さえき)
大島が勤める図書館の館長を務める女性。アラフィフで、19歳の時に自分で作った曲の「海辺のカフカ」が大ヒットしたという記録を持つ。20歳の時に最愛の男性を大学の紛争で亡くしてしまった悲しい過去を引きずっている。
ナカタ(なかた)
二人目の主人公のような存在。東京の中野区に住む60歳代半ばの男性。知的障害を持ち生活保護を受けながら生活している。
1分でわかる「海辺のカフカ」のあらすじ
主人公となるのは、15歳の思春期真っ只中の少年です。
物語は、昔、母親に捨てられた暗い過去がトラウマとなったのと、父親から呪いをかけられたことが原因で家出をすることから始まります。
四国に住んでいるカフカは、家を飛び出した後、香川に向かうのです。
また、別のところでは、猫と会話ができる「ナカタさん」という人物がいました。
彼は、いつも猫探しを周囲の人から頼まれて活躍していました。
しかし、「猫殺し」に出会い、猫好きのナカタさんは我慢できずに、その猫殺しを殺してしまいます。
そんな、カフカとナカタには不思議な繋がりがあるという話です。
村上春樹「海辺のカフカ」の起承転結
【起】海辺のカフカ のあらすじ①
主人公となる田村カフカは、逃去との中野市に住んでいる少年で、15歳の中学3年生です。
彼は、都内で父親と二人で生活していました。
カフカは、実は幼少時代に母親から捨てられてしまったという暗い過去を持っているのです。
そのことは、カフカにとってずっと心のキズとなっていました。
ちなみに、田村というのは本名ですが、カフカは本名ではありません。
本名に自信がないのか、あえて偽名を使っていたようです。
そんなカフカは、15歳の誕生日の時に、父親から恐ろしい呪いをかけれれます。
父親は、「お前はいつか自分の手で、父親を殺し、母と姉と交わるだろう」と言い出すのです。
そのことがは、カフカにとっては居ても立っても居られないほど不快なものでした。
それで、カフカは、カラスと呼ばれる少年の支援を受けながら、家出を決意します。
カフカが選んだ旅は、深夜バスでの旅行で、一路、四国を目指しました。
それは、カフカにとっては四国は未開の地だったからです。
一晩、バスに乗って到着した四国。
そこで、さくらという女性に出会います。
四国の土地勘がないカフカは、当初、ホテルとジムと図書館に通うだけの毎日でしたが、ある日、目覚めると、なんと森の中で血だらけで倒れているのです。
すっかり動揺したカフカは、桜に連絡して彼女の家に泊めてもらうのです。
ちょどその頃、ナカタさんは日々平穏な生活を送っていました。
彼は、幼い頃の事件にて脳に障害があり、知的障害があったのです。
しかし、そのせいでしょうか、猫と話せる能力がありました。
その能力を駆使して、行方不明の猫を探す仕事をしながら生活しています。
ある日、猫殺しの男に遭遇して、その犯人を殺害してしまします。
実はその犯人は、カフカの父親だったのです。
逃亡生活となったナカタさんは、トラックをヒッチハイクし、高松に向かうのです。
ナカタさんには、「入り口の石」を探すという使命があったのです。
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【承】海辺のカフカ のあらすじ②
いつまでも、さくらの家に転がり込んでいるわけにはいかないと感じたカフカは、いつも利用している、甲村図書館に行き、そこで司書を務めている大島さんに図書館に泊めてほしいと頼み込みます。
それを聞いた大島さんは、艦長の許可が必要なので、自分の所有している、別荘に仮に止まってはどうかと提案してくれます。
その別荘は高知にありました。
それで、カフカは、高知に向かうことになります。
そして、高知に着いたカフカは、のんびりしてくつろいだ生活を送っていましたが、図書館の司書の大島さんが、迎えに来てくれて、図書館で宿泊できる許可が取れたと言ってくれました。
カフカは、図書館で生活することになりました。
その図書館の館長の佐伯さんは、50歳代の女性でした。
彼女は、いわばエリートで、幼い頃から順風満帆な生活をし、なに不自由なく育ってきた女性でしたが、一つだけ、辛い過去がありました。
彼女は20歳くらいの時に、結婚を約束した許嫁がいました、しかし、許嫁の男性は学問が好きな男性で、四国を出て東京に行ってしまいました。
佐伯さんは、四国をなはれることなく、この地で、音楽大学に進学しました。
しかし、東京に行った許嫁は大学で起こった紛争に巻き込まれて亡くなってしまいました。
ショックを受けた佐伯さんは当時、行方をくらまし高松に戻ってきたのは、それから25年後のことでした。
実は、カフカが宿泊していた図書館の部屋は、佐伯さんの許嫁が使っていた部屋でした。
カフカは、その後、その部屋で不思議な体験をするようになります。
なんと、15歳の姿の佐伯さんの亡霊が、カフカの部屋を訪れるのです。
その美しさに、カフカは心奪われます。
そして、カフカはすっかり恋に落ち、ついには体の関係を持ってしまうのです。
そして、カフカは直感的に佐伯さんが自分の母親ではないかと感じ始めますが、それは確認できませんでした。
また、司書の大島さんは、女性の体を持つ男性だったこともわかります。
大島さんはカフカに色々なことを教えてくれるのでした。
【転】海辺のカフカ のあらすじ③
猫と話せるナカタさんは、「入り口の石」を探すために、トラックをヒッチハイクして、いよいよ、高松にやってきました。
そして、辿り着いたのが、カフカが生活している甲村図書館なのです。
ナカタさんは館長の佐伯さんと話しますが、そこで、佐伯さんは、自分がころまで書いてきた自分の記録を消去してほしいとお願いし始めるのです。
そして、その後、佐伯さんは机に顔を埋めるような姿で亡くなってしまいました。
一方、ナカタによりカフカの父が殺されたため、関係者であるカフカを警察が探していました。
それを知ったカフカは、もう一度、高知の別荘の古屋に逃げ込んでしまいます。
そして、なんと、カフカは、さくらを強引に合歓する夢を見て、自己嫌悪に落ちてしまうのです。
それで、カフカは、森の中を当てもなく歩き回り、その途中で、荷物もどんどん捨ててしまいます。
しばらく彷徨っていると、兵士のような姿の二人組に合います。
二人の話では、戦争の演習中に逸れてしまったというのです。
その戦争は随分昔に行われたもので、兵士は、この場所には時間の概念がなく、このままでは元の世界の戻れないというのです。
その昔の世界には、15歳の佐伯さんや、本が全くない図書館がありました。
現在の佐伯さんは、「もう自分は死んでしまったけど、カフカは生き残ってほしい」と語り、1枚の絵を差し出します。
その絵こそ「海辺のカフカ」だったのです。
そう、それは、佐伯がかつて描いた、渾身の作品だったのです。
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【結】海辺のカフカ のあらすじ④
その頃、猫と話せる能力を持つナカタさんはホシノさんとともに、佐伯さんの過去の記録を燃やしていました。
それは、佐伯さんの願いでした。
ナカタさんはその役目を終えると、安心したような表情で、眠るように亡くなってしまったのです。
そして、残ったホシノさんは、ナカタさんの意を汲み取って、「入口の石」を閉じる役目を果たそうとします。
ホシノさんは、そのタイミングを見計らうように、ナカタさんの亡骸に寄り添っています。
そして、驚くべきことに、ホシノさんはナカタさんの特殊能力だった、猫と話せるという能力を授かったのです。
そして、ホシノさんは猫と会話し、「じゃあ悪なものが入口の石を狙いに来る」とお達しを受けます。
そして、その夜のことでした。
猫が言った通りに、ホシノさんの前に猫が言った通りに、邪悪なものが出現するのです。
それは、白くて奇妙な形状をしたもので、なかなか手強く倒せませんでしたが、ホシノさんは決死の戦いを繰り広げて、それを殺して袋に詰めて焼却しました。
そして、この出来事を警察に通報するのでした。
一方、カフカは森を出て高知の古屋に戻ります。
そこには、大島さんのお兄さんがいます。
そして、二人で図書館に行き、大島さんに挨拶をするのです。
そして、大島さんが、図書館の館長を継ぐことを聞かされます。
こんな体験をしたカフカは、いろいろなことを体験し、全てが終わったような気持ちになり、東京へ戻り、もう一度学校に通おうと決意するのでした。
村上春樹「海辺のカフカ」を読んだ読書感想
この作品は、かつて学生時代に、学校の推薦図書に指定されて、無理矢理読まされた小説でした。
でも、実際に読んでみると、学校が指定するにしては、お堅いところがなく、面白く読める小説だなと思いました。
正直、大人になった今となっては、大衆小説よりも、いろいろな表現が抽象的で、少し堅苦しいところもありましたが、学生時代だった当時の自分にとっては、文学という概念に囚われない、自由な雰囲気を少し感じたのです。
でも、ファンタチーと言えばいいのでしょうか、猫と話せる人が出てきたり、亡霊のようなものが出てきたり、夢のある作品だったと思います。
でも、最終的には、いろいろな経験をした上で、ものと生活に戻るというおめでたいストーリーは、とても無難で、学校推薦としてもちょうど良い作品だったのかもしれませんね。
でも、村上春樹さんって、映画化されるような興味深い作品を最近はたくさん出版しているので、これからも注目したい作家さんの一人です。